女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

チグハグ、エンドレス

担当セラピスト=D店/KUさん(30代前半・筋肉質・体育会系・真面目・誠実・一本気)

 

HP内の写真で見た肉体美と、本人曰く「それしか取り柄がない」という真面目さに惹かれてKUさんを指名。なるほど、日記やSNSを見ても真面目な性格が伝わってきます。

“真面目”というのは紛れもなく長所です。けれど状況によっては、柔軟な対応がしにくかったり、融通が利きにくかったりという短所にもなりうる。D店・KUさんを指名したことが、それを知るいい機会となりました。

 

事前に交わしたメールのやり取りで、何度か「ん?」と感じることがあったKUさん。「短文を書くのが苦手なのかな」と思ってやり過ごしていたのですが、予約日当日、その違和感は決定的なものに。

 

落ち合う駅は決まっていたものの、具体的な場所は未決。予約時間の30分ほど前に、「待ち合わせは西口の◯◯前でいいですか?」とメールしました。KUさんはそれにはイエスともノーとも言わず「北口の◯◯知ってます?」と即レス。こちらの提案はスルーなんですねと思いましたが、グッと飲み込み「知りません。地図を見ても分からないと思います」と返信しました。「では駅に着いたら連絡ください。迎えに行くか、電話で道案内をします」と返されて溜息。知らないと言っているのに、ユーザーの希望に合わせてくれないんだ…。

 

電車を降りて「北口」の表記を探し歩いても、そんな案内は見当たりません。「北口なんてありませんよ」とメールすると、「今どちらですか?」「ホーム降りたところです」「まず改札出てもらえます?」「いや、北口がないので向かいようがないんですが」「何口でもいいから、とりあえず出てください」…ふぅ。溜息がまた一つ。その後電話を繋ぎながら、結局どちらの提案でもない場所で落ち合ったのですが、この時点で私はもうだいぶ萎えています。ホテルに向かいながらも、頭の中は「このお店のシステム、どうだったっけ? 今キャンセルした場合いくら掛かるのかなぁ」ということでいっぱい。

 

キャンセル料に思いを巡らせているうちにホテル着。お茶を飲みつつ、本業の仕事やセラピストをしている理由等を聞きました。さっきまで心ここにあらずだったため部屋に入ってから気付いたのですが、私、彼と話していても全く楽しくない。

理由として考えられるのは、その真面目さゆえに、全部の質問に100%真実で答えようとして一切遊びがない点。セラピストをしている理由も、ユーザーには黙っておいたほうがいい内容まで話してしまったり、他のユーザーさん達の話…もちろん個人情報ではなく「こういうお客さんにこういうサービスをしました」という話ですけれど、それを1から10まで包み隠さず言ってしまったりする。プラス、訊かれたことに一生懸命答えるあまり、私がどういうサービスを受けたいかは尋ねてこない。自分の心が猛スピードで閉じていくのが分かり、「これは早めに言ったほうがいいな」と判断してKUさんに伝えました。

 

メールのやり取りで不快に思った点や、今どんどん心が閉じていっていること、楽しめる自信がないから予約したコース時間より短くして欲しいこと。私の気持ちを聞いたKUさんは、「言ってもらって良かったです、ありがとうございます。勉強になりました。お店には僕から伝えます」とすぐに連絡してくれました。

 

料金を支払った後、ベッドに入って施術開始。けれど心を開いていないせいか、身体も気持ちも硬いまま。目をつむって時が過ぎるのを待っていたら、特に会話もないまま普通のマッサージから性感マッサージへと移行しました。うーん、どうしよう。全然気持ちよくないどころか、何の感情も湧きません。いつもなら敏感な箇所も、冷静に「今触られている」という事実を認識するだけ。懸命にいろいろしてくれるKUさんでしたが、何をしても無反応なユーザーを前に、途中からどうすればいいか分からなくなっている様子でした。私も「これ以上時間を共有しても、お互いに意味がないな。高い勉強代だったと思って諦めよう」と思い、「悪いんですけど、もう帰ってもらっていいですか? ご覧の通り、体も反応しないので…」と告げました。

 

すると彼は、ベッドを降りて床に正座。何かと思えば、土下座しながら「本当に申し訳ありません!」と言ったのです。大きな声で、何度も何度も。驚き過ぎてしばらくフリーズしました。我に返り、慌てて「やめてください。そんなことして欲しくないし、第一それほどのことじゃないです」と伝えても、額を床につけて謝り続けました。誰かに土下座されるなんて人生で初めてのことです。しかも下着一枚での土下座姿…これは居たたまれないです本当に。一向にやめないKUさんに、「やめてと言ってるんだから早くやめてください。聞こえてますよね?」と怒ると、ようやく顔を上げてくれました。この時私が望んでいたのは、土下座なんかじゃなく速やかに部屋を出ていってくれること。閉じた心を開放するため、早く一人になって良い香りの入浴剤を入れ、ゆっくりお風呂に浸かりたかった。それだけです。

 

KUさんは本当に真面目で、顔も整っていて、きっと仕事(本業)も出来る方なのだと思います。彼を指名するユーザーも大勢いるでしょう。でも、私とは相性が悪かった。

この時反省したのは、少しでも疑問に思ったら、面倒がらずにすぐその場で訊いたり指摘したりすればよかったということ。そして「無理だ」と感じたら、ホテルに入る前に勇気を持ってキャンセルすること。女風は、性行為はしないけれど密室で肌を合わせるわけだから、慎重過ぎるくらいでちょうどいいのだと思います。この日の出来事は、女風の利用にも慣れてきて、当初より慎重さが確実に薄れた私への戒めだったのかもしれません。彼は「勉強になった」と言ってくれましたが、それはこちらも全く同じ。

 

というわけで、この日学んだことは…

 

一.「覚えた“違和感”を大切に。どうしても合わない人、相性の悪い人というのは存在する。万人とぴったり合う人なんてこの世にいない」