女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

夫との馴れ初め

 

 

仕事上、今後も顔を合わせざるを得ないKTさんのことを、少しでも早く吹っ切りたい──。そんな思いもあって、私は「すぐさま新しい恋をしなければ」という気持ちでした。ただ、前回の記事(「最後の恋・参」)でも書いたように、「自分を見失うほどの恋はもういい。穏やかで、安定した関係を築ける相手を見つけたい」と思った。そして、「それって恋愛ではなく結婚なんじゃないか?」と感じたのです。

 

カテゴリー「生い立ち」内で綴った通り、私には結婚願望というものがありませんでした。よって、昔から耳にしていた「恋愛と結婚は違う」という類の話もいまいちピンと来ていなかったし、そもそも他人事としてしか捉えていないので聞き流していた。けれど“自分事”として考え始めた途端、先人達のいろいろな言葉が脳裏に蘇ってきたのです。「“2番目に好きな人”と結婚すると上手くいく」「大好きな相手じゃない限り、同じ家でずっと一緒に暮らすのは無理」「結婚=生活。恋心だけでは続かない」「相手がお金持ちなら大抵のことは許せる」「恋愛に向いている人と、結婚に向いている人は全く違う」…等々。

 

ただ、私の場合は「結婚がしたい」というより「穏やかで安定した関係性を築ける相手が欲しい」というのがスタート地点です。KTさんに恋をして、「好きで好きでたまらない相手と一緒にいるのはとても幸せで楽しいけれど、同じくらい疲れるし気が休まらない。全然自分らしくいられない」ことがよく分かった。なので、言い方は悪いですが「そこそこ好きな相手」がベストだと考えていました。上記で言うと、「2番目に好きな人」の感覚に近いでしょうか。そして、「同じようなことを考えている男性も一定数いるんじゃないか」と想像。安定した関係性と、“そこそこ”の好き。だったら「恋人募集中」よりも「結婚相手募集中」と宣言したほうが、そういう男性を見つけやすいかもしれない、と考えました。

 

この時、私は36歳。合コンやらマッチングアプリやらで相手を探して、じっくり見極めるだけの気力・体力・自信、そして時間がありません。ちょうどこの時期、通常業務に加えて別冊の編集チーフも担当していたため、忙しさ&責任の重さは入社以来MAX。月に2日ほどしか休みがなく、精神も肉体もギリギリの状態でした。そんな中、既婚者や彼女持ち、火遊びしたいだけの男性と知り合っても無意味です。かと言って結婚相談所へ出向く時間もない。そのくせ「素性のしっかりした男性と出会いたい」という我儘加減(笑)。となれば、泣きつくところは頼れる諸先輩の皆さま方です。

 

幸いというべきか、私がいる業界では36歳なんてまだまだ半人前。70歳を過ぎて現役の方も大勢いらっしゃるし、何より入社時(出会った時)の年齢で時が止まっている方が多く、未だに20代の小娘扱いされることも少なくありません。私がとことん“子分肌”なせいか(笑)、他社にも関わらず面倒を見てくださる先輩がたくさんおいでです。日頃から「困ったことがあったらいつでも言えよ」「何でも相談してね」と言ってもらっていたので、お言葉に甘えて全員に泣きつきました。「実は現在、結婚相手を探しております。周りに『結婚したい』という男性がいらしたら、是非ともご一報くださいませ。何処へでも馳せ参じます」というストレートな内容。すると皆さん、「あんたがそんなこと言うなんて。どうしたの⁉ 大丈夫?」とか「結婚願望なんてあったのか?w」と驚きながらも、即行動に出てくれました。

 

中でも熱心に動いてくださったのは、50代の女性・Nさん。「詳しい希望条件を教えて」と言われたので箇条書きにして送ったところ、何と3人の男性をリストアップしてくれました。それも年下、同い年、年上と、実にバリエーション豊かです。彼女の人脈が広いことは知っていましたが、ここまでだったとは恐れ入った! 「相手にもあなたの基本データと写真を送るから、それでお互い異存がなければ一度会ってみる。そういう流れでいいわよね?」と、鬼のようなスピードで(笑)全てをガンガン進めてくれます。その3人の中に、今の夫となる人がいました。

 

名前はYさん。最初にもらった基本データは、「41歳。175㎝、62㎏。東京都出身。一部上場企業勤務。バツイチ。喫煙者。お酒飲まず。性格=温厚、シャイ。趣味=読書、カフェめぐり」という感じ。画像も添えられていたのですが、「何でこの写真…?」と訊きたくなってしまうようなショットでした。職場でふいに撮られた風の写真で、計5~6人写っているからまず「どの方ですか?」となるし、「一番左」と言われたその人は何と半目(笑)。「いや、顔よく分かんないじゃん!」と思ったけれど、全身が写っているのでスタイルや服装のジャッジは出来たし、何より楽しそうな会社で働いていることが見て取れたため好印象。少なくとも私の目には、加工で盛った自撮り写真等より、ずっと魅力的に映りました。

 

お会いしたい旨を伝えると、「先方もそう言ってるって。セッティングするから、なる早で候補日と時間送ってくれる?」とNさんがこれまたテキパキ進めてくれます。当時の私は極端に休みが少なかったため「近々に会えるかなぁ…」と心配でしたが、「Yさんは確実に土日休みの職種」ということで、私の都合に合わせてくれました。あぁ、ありがたい。

 

場所は、「2人の住所の真ん中をとって」Nさんが指定。「とりあえずお茶してきたら?」と某高級ホテルのラウンジを予約しておいてくれるという、世にも完璧なお膳立てです。ラウンジに着くと、入り口付近にそれっぽい人がキョロキョロしながら立っています。「すみません、Yさんですか?」と声を掛けると、「あ、はい。初めまして」と丁寧にお辞儀。緊張しながらも、精一杯の笑顔で接してくれました。その瞬間、直感で「私、この人と結婚するだろうな」と思った。後で訊いたら、夫も同じようなことを感じたそうです。

 

席に通され、夫はコーヒー、私は紅茶を注文。お茶を飲みながら、お互いの仕事の内容や休日の過ごし方、紹介してくださった方(夫側は直属の上司)との関係など、自己紹介&他愛ない話をして2時間ほどで解散しました。話してみた後も、私は「やっぱりこの人と結婚するな」と思った。帰宅後、「ぜひまたお会いしたいです」とNさんにメールしたら、「じゃあ、後は直接連絡取り合ってみて」と夫の携帯番号が送られてきました。これが201810月某日の出来事です。

 

   ー 次回へつづくー