女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

オンの顔、オフの顔

夫が在宅勤務となって約2ヶ月半。私は一足先にリモートワーク体制を取っていましたが、現在は週1~2回出社したり、現場へ直行したりすることも。夫の会社は、緊急事態宣言発令以降、完全在宅勤務に切り替えられました(営業部を除く)。よって“2人とも家で仕事をしている日”が週の半分以上あります。今はもう慣れたけれど、実は開始当初、かなりのショックを受けました。夫の「オンの顔」を初めて見たからです。

 

夫は本当にシャイで、どちらかと言えば消極的なタイプ。決して暗いわけではないのですが、大きな声で笑ったりとか、「今日むちゃくちゃテンション高いなぁ」とか思ったりする日はありません。常に一定といいますか、どんな時でも精神が安定している印象ですね。一方の私は真逆。社交的・積極的・楽観的で、喜怒哀楽も割とはっきりしています。夫は入籍後、「明るくてポジティブな君と結婚できて良かった。明るい人が身近にいてくれると、自分とは違う思考を目の当たりにして『そういう捉え方もあるのか』って発見できる。あと、毎日楽しそうにしてる姿を見ると、こっちまで楽しくなるよ」と言っていました。私も穏やかで平和な生活を送りたかったので、見事に需要と供給が一致したことになります。出会いに感謝。…って、前置きが長くなりましたね(汗)。

 

私はエンタメ系の雑誌記者なので、休日でも深夜でも、仕事関係の方から結構な頻度で携帯に連絡が入ります。ですから、夫には結婚前から“仕事の顔”をしょっちゅう見せていました。といっても、普段からテンションは高いため(笑)、仕事だろうとプライベートだろうとそれほど大きな差はありません。ですが夫は違います。4月上旬、会社の方々とビデオ会議を行っている姿を初めて見た時の衝撃といったらもう…。まずはその饒舌さに驚愕。「喋ってる、めっちゃ喋ってる! 何ならチーム内で一番喋ってるじゃないか‼︎ そして部下にツッコミを入れている! 職場だとこういう感じなんだ…」。続いて笑い声。「デッカイ声で笑ってる!っていうか爆笑してる‼︎ 家で爆笑したことなんて一度もないのに~(泣)」。

 

人にはいろいろな面があるし、誰だって“複数の顔”を持っていることは頭では分かっています。でも、出会ってから初めて見る夫の顔に、戸惑いを隠し切れませんでした。その夜、思わず「会社ではあんな感じなんだね。テンション高いし爆笑してるしで、結構びっくりしちゃったよ」と伝えると、「仕事だから」と一言。さらに驚いて「え⁉︎」と言ったら、「仕事の場だから、頑張ってテンション上げてるんだ。特にビデオ会議の場合、置いてけぼりになる人が出ないように気を配って、一人一人に声掛けようとしてどっと疲れる。たとえ15分でもすごい疲労感…」と返ってきました。そうか、あれは「完全なるオンの顔」で、私といる時は「オフの顔」なのか。

 

私自身もそういう切り替えはあまり必要ないタイプだし、振り返ってみれば、今まで付き合ってきた男性は社交的で明るい人がほとんどだった。だから“頑張ってオンにする”という発想自体がなかったけれど、「もし自分がそういうタイプだったら」と頭の中でイメージしてみました。想像しただけで、それはそれは面倒くさいし一瞬で疲れた…(笑)。確かに、無理して上げたテンションを15分間保つだけでも、ものすごく疲れるに違いない。加えて、多方面に気を遣いながら喋ったり突っ込んだりしなきゃいけないとは。心底「連日大変なんだね、お疲れさま」という気持ちになりました。

 

最初にビデオ会議の様子を目撃した時は、「私とも、もっとたくさん喋ってほしいなぁ」とか「普段から大声で笑ってくれればいいのに」とか思ったけれど、夫にとってそれは“頑張らなければ出来ないこと”であって、決して自然な姿ではないんですよね。彼にとっては、小さな声で喋ったり笑ったり、静かに本を読んだりすることが自然であり楽なのでしょう。単に結婚しただけでは分からなかったであろう事実に気付けたのも、この非常事態のおかげといえばおかげかもしれません。

 

全く違う人間同士が一緒に暮らし、共に生きていくというのは面白いし、いろいろな意味で大変興味深いです。よく、会社内やコミュニティにおいて多様性が重要視されるけれど、一番小さな単位である“家庭の中”でこそ、それが浮き彫りになるのかもしれないなぁ。いや~、何事も日々勉強ですね。誰かと関わり合って生きていくって、やっぱりすごく面白い。