女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

「普通」の定義

昨夜、再放送しているドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る」(NHK)の第3話を観ました。軽く内容を説明しますと──。

 

ゲイである主人公・ジュンには愛するパートナーがいます(現状、周囲にはゲイだとカミングアウトしていません)。けれど「将来家庭を持ちたい」「周りに『気持ち悪い』と思われたくない」「母親を悲しませたくない」という思いから、ジュンは“普通”を求めて彼女を作る。やがて彼女・三浦さんを自宅に招き「普通のセックス」をしようと試みるのですが、途中で萎えて失敗に終わる…というシーンが大変印象的でした。この状況、どっちも辛いだろうなぁ。

 

実は、夫と結婚する前「もしや彼はゲイなんじゃないか?」と強く疑った時期があります。

私と夫は、交際期間中から今日に至るまで、ただの一度もセックスをしたことがありません。夫からは「ある理由により」と聞かされていたけれど、ふと「ゲイってこともあり得るな」と感じた。根拠は、①結婚前から「子供は作らない」と頑なに決めていたから、②そういう映像作品に極端な嫌悪感を示すから、の2つです。

 

①に関しては私も全くの同意見だから結婚したわけですが、ある日「単に『子供が欲しくない』というわけじゃなくて、女性との性行為自体がイヤだという可能性もあるのか」と気付きました。

②は、例えば「おっさんずラブ」(テレビ朝日)とか「きのう何食べた?」(テレビ東京)とか、BLを題材にしたヒットドラマを、私が何気なく観ているとものすご~く嫌がるのです。悪口っぽいことをあまり言わない人なのに、「こういうの、本当に気持ち悪い」とあからさまに嫌悪感を示す。私は、普段冷静な夫が感情をむき出しにしているのが嬉しくて「そういうこと言うの珍しいね♪」と無駄にはしゃいでしまったんですよね…。案の定、夫はそれ以降、BLに関して何も言わなくなりました。

 

私は「特にBLが好き」というわけでもなく、単純に恋愛ドラマとして楽しませてもらっています。出演俳優のお芝居が好きだったり、登場人物(役そのもの)が魅力的だったり、心情の描き方が素敵だったりで観ているに過ぎず、「男女の恋愛じゃないから気持ち悪い」という感情は湧かないし、そもそもどうして気持ち悪いのかが分からない。思春期の頃に女性から告白された時も、社会人になって女性の先輩にキスやら何やらを迫られ結局いろいろされた時(笑)も、「好きな人がいるのでごめんなさい」とは言ったけれど、「女性同士なのでごめんなさい」とは全然思わなかった。だからといってバイでもないと思いますが、変だとか不思議だとかは感じませんでした。それはLGBTQに限ったことではなく、身障者や外国人に対しても同じです。

 

昔、日本を代表する大きな施設でアルバイトをしていたことがあります。一日の来場者数は数万人単位なので、バイト1人がさばく数も相当多くて忙しかった。実に多種多様なお客さまが来場されるのですが、常連の方もかなり多く、顔見知りになると「毎度どうも~」とか「今日もよろしくね」とか、声を掛けてくださる方も大勢いました。

 

店員さんでも街を歩いている人でも、“話し掛けやすい人”と“そうでもない人”っていますよね。私はきっと、だいぶ話し掛けやすいタイプなのでしょう。たくさんの人が行き交っていても、なぜか狙いを定められて駅や路上でしょっちゅう道を訊かれます。地図、読めないんですけどね…(泣)。話を戻しますと、その施設でのバイト中は、身障者や外国人の方々に気に入られる率が非常に高かった。いわゆる“お得意様”の中にもそういう方が多くて、かなり贔屓にしてもらいました。最初は「何百人もバイトがいるのにどうしてかなぁ?」と思っていましたが、あるお客さまの言葉で「なるほど」と合点がいくことになります。

 

そのお客さまは、恐らく左半分が顔面麻痺の方で、当時40歳くらいの女性。よく来てくださる常連さんだったけれど、私とは短い言葉を交わす程度の間柄でした。あるとき彼女が、「他県へ引っ越すから当分来れなくなるの。ここには何度も来たけど、あなたがいるからいつも安心だった。お世話になってありがとうね、頑張ってね」と高価であろう差し入れを手渡してくれたのです。そんなふうに感謝してもらえる理由が分からず、「こんな高いもの頂けません。それと私、何もしてないと思うんですが…」と言ったら、こう返ってきました。

「うん、確かに何もしてないわね(笑)。でもそれが嬉しかったの。私はどこへ行ってもジロジロ顔を見られる。だけどあなたは最初から普通だった。あなたって、誰に対しても同じでしょう。どんな人が来ても驚かないし、何語なのか全然分からない外国人にも、平気で日本語のまま応えてる。あと、耳が不自由な方とも喋ってるから、手話が出来るのかと思って近付いたら何も出来てなかった(笑)。だから私は、他の人じゃなくあなたのところへ毎回来てたのよ。これはほんの気持ち。深く考えずに受け取ってちょうだい」

 

すごく嬉しかったのと同時に、「へぇ~、そうなのか」と思いました。この時、私が気付いたことは2つです。まずは「他のバイトさん達は、お客さんによって態度を変えることがある」という事実。もう一つは、この女性をはじめ「“普通に接する”というだけで、わざわざ私のところへ来てくれるお客さんが存在する」という事実。自分ではよく分かっていなかったため、引っ越す前に言ってもらえて良かった。知らなかった“自分自身の長所”を教えてもらい、何やら得した気分でした。それからしばらくは、「普通って何だろう?」と真剣に考える時期が続いたっけ。この頃(10代後半)、「私の思う“普通”と、世間が思う“普通”には差があるのかもしれない」と初めて認識したような気がします。

 

昨夜、ドラマを観ていたら偶然出てきた「普通のセックス」というセリフ。その一言を聞き、久しぶりに“普通”についてあれこれ思いを巡らせたけれど、いろんな意味で大人になった今は「普通のセックスなんてない」と感じています。セックスは人によって全然違うし、その日の気分や体調によっても変わる。まして相手が変わればやり方も変わるわけで、「何が普通か」などといちいち考えていません。というか、別に考える必要もないと思う。

 

家庭も同じです。「普通の家庭」なんてものは存在しないんだと思います。子供を作らない、家事はそれぞれがやる、気が向けば一緒に過ごすけれども基本的には休日も別行動。私たち夫婦にとってはこれが当たり前で、お互いにすこぶる快適な状態。時には意見がぶつかったり、考え方の違いに驚いたりすることもありますが、それはそれで面白いし視野も広がります。結婚してからまだ8ヶ月なので、「結婚とは何か?」と訊かれても答えられないけれど、“日々いろいろな発見がある”ことは間違いありません。

 

ちなみに、今朝起きたら夫は外出していて既にいなかったのですが、テーブルにメモ書きが置いてありました。

「出掛けてくるね。あと、アベノマスク届いてたよ」

アベノマスク情報はどうでもいいから、出来れば行き先と帰宅予定時間を書いて欲しかったなぁ…とうっすら思う休日の朝でした(笑)。