女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

極・男前

810日、俳優・渡哲也さんが肺炎のため逝去されました。先月、「石原プロを(来年1月に)たたむ」との正式発表があったばかりだったので二重に驚いたというか、「人知れず諸々の準備をなさっていたのかな」と思いを巡らせています。

 


渡さんとお目にかかったことはありませんが、石原プロさんには、記者になりたての頃だいぶお世話になりました(裕次郎さん関連で)。数年前には、石原軍団の若手を取材させてもらう機会があり、初めて舘ひろしさんにお会いし完全ノックアウト。

  


当日の流れとしては、都内某店にマスコミを集め、主役である若手のインタビュー後、舘さんが(その若手に対して)応援コメントを出すという感じでした。

 


会場に着いてまず圧倒されたのは、入口付近にズラッと並んだ若手俳優たちの姿。全員男前(イケメンというより男前と表現したい雰囲気)なのはもちろん、皆さん背が高くて目力があり、ものすご〜く姿勢が良い。「こりゃあ単なる男前集団じゃないな」というのが一目瞭然でした。失礼ながら、そこまでメディア露出が多くない方でも、日頃から殺陣や乗馬、武道の稽古を積んでいるであろうことが分かります。季節柄、厚手のスーツを着ていたにも関わらず、胸や腕の盛り上がった筋肉、プリッと上がったお尻等、役者業のために鍛錬を重ねている身体が容易に想像可能。そして全ての所作に無駄がなく、美しい。和装の方は1人もおられないのに、まるで時代劇の世界に迷い込んだような錯覚をおぼえるほどでした。その時点で、私はすっかり魅了されてしまいました。


 

主役の俳優さんも相当素敵だったけれど、舘さんが登場した瞬間、そのダンディーさと華やかさ、プラス大人の色気にあてられて(笑)卒倒寸前。私からすれば父親以上の年齢なのに、純粋に男性としてめちゃくちゃ格好良かった。加えて、渋~い声で「お忙しい中、〇〇(主役の名前)のために足を運んでくださりありがとうございます。本日は宜しくお願い致します」と深くお辞儀。大御所になればなるほど、もしくは業界で長く活躍している人ほど腰が低いというのは記者生活を送る中で感じていましたが、「後輩の前で大勢の人間に頭を下げる」ことは、口で言うよりずっと難しいと思います。舘さんは、それを当たり前のようにサラッと実行されていました。今思えば、ああいうことも渡さんの教えだったのかもしれません。


 

余談ですが、私は漫画「ゴルゴ13」(さいとう・たかを)が大好き。2008年に放送されたアニメ版「ゴルゴ13」も当然観ており、その際、デューク東郷の声を担当されたのが他でもない舘さん。なので舘さんの第一声を聴いた時、内心「生ゴルゴだ~」と興奮しておりました。もちろん、顔には出しませんでしたけどね(笑)。


 

さて、取材を終えた舘さんは、馴染みの記者としばし談笑。マスコミ陣が機材等を片付け、撤収し始めるのを待って「皆さん、お帰りの際にあちらをお受け取りください。うちの渡からです」とにっこり。先ほど出迎えてくれた若手俳優たちが、今度はお土産を持って立っていて、マスコミ陣に「本日はどうもありがとうございました」と頭を下げながら一人一人に手渡してくれるのです。私も「すみません、ありがとうございます」とお辞儀をしつつ受け取り、よく分からないけれどもすごく心地の良い、ぽわっとした感情のまま社へ戻りました。

 


言葉って不思議だな、とつくづく感じます。取材中、あんなにいろいろお話を伺ったのに、一番残っているのは「渡からです」という舘さんの一言。渡さんはその場にはいらっしゃらないけれど、舘さんが「渡から」と発したことにより、帰社してお土産を開く時も「これは渡さんから頂いたものなんだ」と思う。会ったことのない人を、強く意識する。


 

当社も多くの芸能プロダクションとお付き合いさせてもらっていますが、ああいう関係性を築いている事務所は非常に稀だと思います。石原プロ自体は解散してしまいますけれど、絆や礼節、美しい言葉遣いや所作等は、どういう形であれ継承していって頂けたら嬉しいなぁ。



仕事柄、高価な衣装を身にまとっている方には度々お会いしますし、たとえ少し背伸びした恰好だとしても、それが悪いとも思いません。けれど舘さんは、衣装に着られているのではなく、完璧に着こなしておられました(私が言うのもおこがましいですが)。上等なスーツがあれほどまでに似合う大人の男の集団に出会ったのは、後にも先にもあの時一度きりです。スマートで、穏やかで、だけどユーモアと熱さもある。男前の極みでした。

 


石原プロモーション様、1963年からの長きに渡り、大変お疲れさまでした。残り約5ヶ月間も、どうぞ悔いなきよう駆け抜けてください。多くの作品と夢を、ありがとうございました。