女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

バレンタイン。甘くも苦くもない記憶

皆さまがお住まいの地域では、地震の影響ありませんでしょうか? 昨夜は私はリビング、夫は自室におりまして、落下物や怪我等もなく二人とも元気です。


東日本大地震から、もうすぐ丸10年。何年経っても“緊急地震速報の音”というのは慣れないというか、心臓によくないですね…。心も体もビクッとしてしまいます。各地で今後、余震や二次災害が発生しないことを祈ります。

 

さて、本日はバレンタインデーです。夫には、ショコラ専門店で買ってきたお高め(ひと粒何と‼︎約480円)のチョコレート詰め合わせをプレゼント。40種類以上ある中から好きなものを選べるシステムだったため、12粒全て違う味にしてみました。先程ベリー味と胡椒味を食べましたが、風味の広がり方がすごく上品で、めちゃくちゃ美味しかったです〜♡   夫も喜んでくれたし、少し遠くまで求めに行った甲斐があったなぁ。


ところで。私は12年ぶりくらいに、「バレンタイン当日にチョコを一つも頂かない」という状況に置かれております。


どういうことかと申しますと──。


私は昨秋まで、小さな出版社に16年間勤務していました。職種は、エンタメ系雑誌の記者。歌手や俳優さんを取材させて頂くことが多かったのですが、入社して数年が過ぎると、バレンタインに「いつもお世話になってるので」とか「日頃の感謝の気持ちです」とかで、取材対象者や担当歌手&俳優からチョコレートを贈られることが増えていきました。


若い女子だと手作りしてくれたり、お姉さまだととんでもなく高級そうなチョコだったり。ここ数年は、女性のみならず男性からも結構頂きました。プロ顔負けのチョコスイーツを作って、キレイにラッピングまでして持ってきてくれる“スイーツ男子”もいれば、「女性は全員、コレ好きでしょ?」とウインクしつつ(笑)某有名メーカーのチョコをどっさり用意してくれるオジサマもいたっけ。新曲の発売が近かったりする場合は、男女問わずタイトルやらリリース日やらを(チ◯ルチョコ等のパッケージに)入れ込んで関係者に配れば、プロモーションツールとしても最適です。よって、バレンタイン前後の1週間くらいは、チョコをもらう機会が本当に多かった。でも、今年からはそれが一切ありません。


正直言って、かなり寂しいです〜(泣)!


“食”への執着が強いタイプではない私ですが、チョコレートは昔から大好物。バレンタインの時期は、普段店頭に並ばないような見た目・味のチョコもたくさん出回るため自然とテンションアップ。彼氏がいようといまいと“自分用”に買ってパクパク食べていたし、彼氏がいる時は「どれにしよっかなぁ♪」とあれこれ迷うのも楽しかった。だから、「感謝の気持ち」と共に贈られるチョコレートは素直に嬉しい上、いつの間にか期待してしまっている自分もいました。だって、人から頂くチョコって、なぜかとっても美味しく感じるんだもの(笑)。今は“義理チョコ禁止”の会社も多いと思いますが、いざ頂いてみると嬉しいので、残念がる方々が一定数いるのも頷けます。


私は私で、14日当日にお会いする歌手や俳優さんには、必ずチョコレートをお渡ししていました。実は入社当時はどなたにも差し上げていなかったのですが、3年目くらいの時にちょっとした事件(?)があって改めることに。経緯はこうです。


その日はバレンタイン当日。担当している若手歌手のインタビュー&撮影があり、朝から小道具を調達してスタジオへ直行する流れでした。スタジオ最寄駅に着くと、構内の特設ブースで「バレンタインフェア」なるものを開催中。「そういえば、忙しくてチョコ買えてなかったんだ…。(当日同棲していた彼氏は)『今日じゃなくてもいいよ』って言ってたけど、ここで買って夜渡そうかな」と思い慌ててチョコを購入。小道具とチョコレートを抱えてスタジオへ向かう道すがら、後方よりプップと優しいクラクション音が。振り返ると、歌手のマネージャーさんが車の窓から顔を出しています。


「すみません、予定より早く着いちゃいまして…。時間つぶしてきたほうがいいですか?」

「いえ、もうスタジオ入れる時間なので大丈夫ですよ」

「良かった! じゃあ一緒に行きましょう。後ろ乗ってください」

「ありがとうございます。では失礼します」


後部座席におじゃますると、キラキラした瞳で開口一番、若手歌手が「ねぇ、それチョコ? チョコだよね? 今日バレンタインだもんね、僕チョコ大好き〜!」。え…。


「イヤごめんなさい、これは彼氏用です。っていうか、チョコなんていっぱいもらうでしょう? 別にわざわざ…」

「えぇぇぇぇぇヤダヤダ! 彼氏の買うなら僕にも買ってくれてもいいじゃん。ヒドーイ‼︎」

「イヤあの、だから…」

「いっぱいもらうかもしれないけど、僕は女性全員からもらいたいの! しかも◯◯さん(←私の名前)、僕の担当記者じゃん。チョコ買うとき僕のこと考えないなんて、愛が足りてないよ。ヒドイ〜‼︎」

「待って! 誌面見て分からない? 愛があるからあなたのページ作ってるんでしょ? 今日の取材だって…」

「それは分かってるよ、いつもありがとう♡   でもチョコは別だよ、僕チョコ欲しいもん!」


私も若かったので、「何だコイツ。小学生かよ!」と思ってイラッとしたけれど(笑)、もちろん言葉には出しません。それに、「車中だけのトークというか、冗談言って良い雰囲気を作ろうとしてくれてる可能性もあるな」と感じ、適当にあしらってスタジオへ入りました。諸々の準備もあるため、二人を楽屋へ押し込み「それでは後ほど」。けれどすぐに彼が追いかけてきて、「待ってる間にチョコ食べたい。ねぇ、今ちょうだい!」。


何なんだよ、どんだけワガママなんだよと呆れましたが、「そこまで言うなら分かった。譲りましょう」という気にもなりました。実際、「も〜う、分かりましたよ! じゃあ楽屋で待ってて」と持っていくと、「いいの? 彼氏用なのに僕が食べちゃっていいの? ワーイ♡」と無邪気な笑顔(私には一瞬、悪魔のような微笑みにも見えましたが・笑)。その場で勢いよく開け、美味しそうに頬張っていました。後でマネージャーさんが謝りに来て、「本当にすみませんでした。でもありがとうございました、助かりました。最近忙し過ぎるせいか、ああやって周りの人間を試すみたいなことが増えて…。特に食べ物は、信頼している人からのものじゃないと口に出来ないので、◯◯さんのことは信用しているんだと思います。甘えてしまって申し訳ありません」と頭を下げられました。


なるほど、なかなかに面倒くさい。でもまぁ、彼の気持ちを全く理解できないわけでもありません。デビュー以降目まぐるしく環境が変わり、チヤホヤされ、敵なのか味方なのか分からない人もどんどん増えた。大勢のファンから差し入れをもらっても、彼の手元に届くのは手紙くらいで、あとは危機管理の観点からそれなりに処理される運命です。食べ物なんて論外中の論外。そう考えると、「いっぱいもらう」のは確かだけれど、その中に「安心して口に出来るもの」はほとんどないんだという現実に、その時初めて気が付きました。要するに私は、そういうところまで考えが及んでいなかったのです。思慮不足、経験不足ですね。この出来事は、大変いい勉強になりました。


以来、バレンタイン当日にお会いする歌手や俳優さんには、ややお高めで、誰でも知っているお店のチョコレートを少量お渡しするようになりました。それなら先方も安心&負担にもならないだろうし、「要らないなぁ」と思った場合でも、周りのどなたかに譲りやすいからです。


そんなわけで、バレンタインが近づいてくると、自然に彼のことを想ってしまいます。実らなかった恋でも、歴代の彼氏でもなく、単に「担当だった人」のことをこんなに長く覚えているとは…。「チョコ買うとき僕のこと考えないなんて、愛が足りてないよ」という言葉が頭から離れず、結局、毎年思い出してしまう始末。術中にはまっているのか何なのかよく分からないけれど、ああいう台詞をサラッと言えてしまうのも、一つの才能なのかもしれません。私の“バレンタインの思い出”は、彼一色に染められてしまい、今のところ塗り替えられる気配すらございません(笑)。