女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

バリトンボイスの君

先日、少しお高めのオイルマッサージを受けてきました。そのお店は、何度か行ったことのあるアロママッサージ屋さんなのですが、お願いするのは毎回リフレクソロジー。ゆったりした椅子に腰掛け、フットバス→アロマ選び→リフレ50分というコースがお気に入りです。でも今回は、初めて全身オイルマッサージコース90分をセレクト。担当セラピストさん(女性)との相性がいい&彼女の腕も確かなので、ちょっと奮発してみました。


個室に通され、手渡された施術着に着替えます。施術着といっても、使い捨てのショーツ+バスローブだからほぼ裸ですけどね(笑)。薄暗い照明の中、ベッドに横たわってセラピストさんの到着を待ちます。部屋全体にいい香りが漂っているし、波の音は流れているしで、目を閉じたら眠りに落ちてしまいそうなくらいリラックス。ウトウトしかけていると、隣室に新たなお客さんが。バリトンボイスが素敵な、ある程度大人の男性の気配がします。私は声フェチ&彼がよく通る声質だったため、自然と会話の内容が耳に入ってきました。


男性は67歳。役員的な立場なのか、「会社へはたまにしか行かない」そう。「今日は歩きすぎて疲れたから、ここを予約してみた。最近は5000歩以上歩くと疲労が抜けない。一日3000歩くらいがちょうどいい」と話していました。へぇ、(もちろん人にもよるでしょうが)67歳だと5000歩で疲れちゃうのか〜と思いつつ、いつの間にか熟睡してしまい、起きたのは「仰向けになってください」「本日はこちらで終了となります。オイルを拭き取りますね」と言われた時だけ。せっかく奮発したのに、ほとんど寝ている結果となってしまいました…(泣)。まぁ、それだけ気持ちよかったということでしょう。


私服に着替えた後、ロビーへ移動。セラピストさんが淹れてくれたローズヒップティーを飲みつつゆっくりしていると、隣室の男性も施術を終えて個室から出てきました。コの字型ソファーの、私は中央部分にいて、男性は右端に着席。何気なく右へ視線を移すと、ちょっとした違和感があります。1.5秒くらいして、「あぁ、女装してるからか」と気付きました。「男性が出てきた」と思い込んでいるところに、男性なんだけども女性の恰好をした紳士がいたので、一瞬脳がバグってしまったわけですね(笑)。でも、理解出来てからは別にどうってことないというか、「そういうスタイルの人なんだろうな」と思って普通にまったり。すると、紳士が「すみません、何飲んでるか伺ってもいいですか? お茶選べるって言われたんですけど、どれがいいか分からなくて」と話しかけてきました。テーブルの上に、各ハーブティーの特徴や効能をまとめた紙が置いてあるけれど、それを読めというのも野暮だし、いつの間にかセラピストさんはロビーにいないし(笑)、何より“話す口実が欲しいだけ”と察知したのですぐ答えます。


「これはローズヒップティーっていうお茶です。飲んだことありますか?」

「いいえ。恥ずかしながら、ハーブティーのことあまり詳しくないんです」

「全然恥ずかしくないですよ。甘いのが好きとか酸っぱいのが好きとかあります?」


私は家でもハーブティーを飲む習慣があるため、そこそこ知識は持っています。「遂に花粉症デビューしてしまった」と言うので、「ミントティーがいいと思います」と提案し、お茶を飲みつつ軽く花粉症トーク(私もかれこれ25年ほど花粉症です。ちっとも治りません・泣)。彼より早く飲み終わったので、「ではお先に失礼しますね」と席を立とうとすると、「もう一つ訊いてもいいですか?」と紳士。


「はい、どうぞ」

「あの…私のこと、どう思いますか?」

「えっと、今お会いしたばかりだし、よく知らないし、特にどうも思いません。あ、『すごくいい声だな』とは思いましたけどね」

「ありがとうございます。でもあの、そういうことじゃなくて…」

「あぁ、女装のことですか?」

「はい」

「似合ってるかどうかってことでしょうか」

「いえ、その…。あまり驚かれてない様子だから、周りにそういう人がいるのかなと思って」

「いないですよ。でもマイノリティの友人はいるし、私自身もマイノリティです。なので何も思いません」

「そうですか。どうもありがとうございます。お引き止めしてすみません」

「いえいえ。花粉症、お大事に」


面白いな、と思いました。「他人にどう思われるか」を気にしているのに、“絶対目立つ”と分かっている場所で女装を貫くとは興味深い。当日は予定が詰まっていたため早々に店を出ましたが、時間があったらリアルにカフェでも行って話を聞きたかったです。


仕草や話し方等は完全に男性だったので、“心が女性”なわけではなさそうでした。あくまで趣味で女装をしているか、もしくは日頃から女装のまま生活している人なんだろうか。いろいろ謎でしたが、ワンピース+ハイヒール+ボブのウィッグ+濃い目のメイクにあのバリトンボイスだと、誰でも最初は「…えっ⁉︎」ってなると思います(笑)。慣れれば周囲は大して気にしないと思うけど、きっとご本人的には違うんだろうなぁ…。あのお店でまた会えるかしら。お話、詳しく聞いてみたいなぁ。