女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

デコルテの指先

11月14日、俳優・火野正平さんが、75歳で逝去されました。所属事務所の発表によりますと、「持病である腰痛の治療に励んでおりましたが、夏の腰部骨折を機に体調を崩し、家族に見守られて穏やかな最期を迎えました」とのことです。つい先日、現在公開中の映画「ラストマイル」(佐野昭役)でお姿を拝見したばかりだったこともあり、思わず「嘘でしょ⁉︎」と言ってしまいました。また一人、味のある俳優さんが旅立たれてしまって寂しいです。


正直申し上げて、火野さんがなぜそんなにモテるのか、“稀代のプレイボーイ”“プレイボーイの代名詞”っぽい感じで扱われているのか、昔の私は分かっていませんでした。ですが音楽誌の記者時代、何度かお会いしてすっかり魅了されてしまった。

忘れもしない、初対面のシーン。

時は2010年。若い頃から歌手活動もされていた火野さんが、久しぶりに新曲をリリースした翌年です。ライブ後に囲み取材を行うということで、私もライター兼カメラマンとして現場へ。各々セッティングを済ませ、火野さんの到着を待っていると、「お待たせしちゃってすみませんねぇ」的なことを言いながらフレンドリーに会場入り。顔馴染みの芸能リポーター陣に会釈したかと思ったら、彼らの近くでレコーダーを構えていた私のほうへ一直線。全員が注視する中、私がつけていたネックレスのトップ部分に軽く触れ、じっと目を見つめながら「これ可愛いね。似合ってるよ」と一言。


〈…え? えぇっ⁉︎ いやめっちゃ普通のネックレスなんですけどー! そして私初対面なんですけどー! っていうか、ちっとも嫌じゃなくてむしろちょっと嬉しいの何なのー! たった数秒で女心鷲掴んじゃうって、一体どういう原理なのー!〉 ←心の声


今思えば、“火野正平然とした振る舞い”で場の空気を和ませたというか、サービス精神からくる行動だったのでありましょう。実際、リポーター陣からの「さすが、お幾つになられてもプレイボーイぶりは健在ですね。しかも若い子(笑)」という声掛けで、スムーズに取材が始まりましたから。でも、私だけは胸の高鳴りがしばらく収まりませんでしたよ、えぇ(笑)。


当時の年齢は、日野さん61歳、私28歳。親子くらい年の差があるし、軽くとはいえデコルテゾーンに直接触れていますので、嫌悪感を抱いたとしても何ら不思議はありません。しかしながら、一連の流れがあまりにスムーズで…例えるならば旅先で出会うイタリア人男性並みに自然で、物理的な距離と心の距離、その両方を一気に縮められてしまったのです。色気はあれど、いやらしさや強引さを一切感じさせないボディータッチの仕方、チャーミング+少年っぽい笑顔、それでいて少しハスキーな低音ボイス…等々、要因はいろいろあると思いますが、「たとえ何股していても憎めない」「別れた女性で、彼を悪く言う人は誰もいない」というのは何となく、それこそ本能で納得できるような気がしました。だって、本当にすっっっごく素敵なんだもの♪


火野さんはきっと、“女たらし”というより、“人たらし”なのだと思います。事実、囲み取材後は、男女関係なく「やっぱ火野正平って格好いいよなぁ」「俺もああいう年の取り方したい」「エロと紳士を両立させてる」「あの声で口説かれたら、女性はみんな『まぁしょうがないか』ってなるよね〜」みたいな会話が繰り広げられていました。14年間出演されていた番組「にっぽん縦断  こころ旅」(NHK BS)でも、全国を自転車で巡り、訪れた先で出会う方々、時には動物までもを虜にしていましたもんね。ぶっきらぼうだけど心根が優しくて、ちょっとエッチで(笑)、人のみならず、生きとし生けるものはみ〜んな大好き。俳優としてはもちろん、“人間としての魅力”に溢れた方でした。


火野正平さん。天国でも自転車に乗って、美味しいものを沢山食べて、いろんな人たちと触れ合って、元気にお過ごしくださいね。長い間、私たちを楽しませてくださって、癒やしをくださって、本当にありがとうございました。どうぞ安らかに──。