文春砲(*のちに一部誤報だったことが判明)により、元SMAP・中居正広氏が芸能界から引退、フジテレビは先日、異例の長時間会見を行いました。ですがこの問題、中居氏及びフジテレビに限ったことじゃ全然ありません。“業界全体の話”として捉えたほうがいいと、個人的には思っています。
ジャニーズの時にも書いたけれど、セクハラやパワハラ、忖度等は、様々な芸能事務所で横行しており、“どこか一箇所だけ”ということは、私の経験上非常に考えにくいです。具体例として、雑誌記者時代(2004年春から2020年秋まで)の実体験、及び身近な方々のエピソードをまとめます。全てを挙げるとキリがないため、ごく一部をピックアップしておりますこと、予めご了承ください。
[実体験]
①有名歌手のコンサート取材後、打ち上げの場(周年記念コンだったこともあり、規模は大きめ。パッと見、参加者は100名前後と推測)。歌手が所属している事務所の代表→同レコード会社プロモーターの順に挨拶し、最後に歌手本人が登壇して乾杯の音頭を取り、その後は自由に歓談という流れ。30分ほどして歌手陣営が退席した途端、某テレビ局(ちなみにフジではありません)のプロデューサーが一歩前へ出て、なぜか偉そうに指示。
「女同士で固まってる奴ら、すぐ席移れ。女は全員、男の間に入って酌しろ」
なお、私は某局とのしがらみゼロだし、そもそも従う理由がないため無視していたら思いきりキレられました。結果その場で大喧嘩となり(笑)、「キモいんだよ、このセクハラ野郎‼︎」と捨て台詞を吐いて会場をあとに。当時若かった&ヒートアップしていたこともあって言葉遣いはちょっとアレでしたが(汗)、取った行動に関しては後悔も反省もしていません。
②スタッフさんや記者仲間を交え、まだ芽が出ていない若手の俳優さんと懇親会。食事後、「二次会行こう!」と馴染みのカラオケスナックへ。スタッフさん達は「明日早いので、すみませんがお先に失礼します」と終電前に帰宅。残ったのは同業他誌の記者仲間(私の他に女性3人+男性2人)と俳優さん(男性)の合計7人。私と彼は下戸ゆえ延々ソフトドリンクを飲み、歌っていない時は、爆音の中(笑)割と真面目な話をしていました。その会話の延長を装い、彼が不意に仕掛けてきます。
「◯◯さん(←私の名前)、僕どうしても売れたいんです。売れるには何が必要だと思いますか?」
「当然実力は必要だけど、それだけじゃ足りないと感じてます。これ以上ないタイミングでいい作品に出会えたり、あとはやっぱり運の良さも影響するかなって。あくまで私の考えですけどね」
「じゃあ、僕の運、◯◯さんの力で上げてくれませんか?」
「いやいや、私が人様の運上げるとか無理ですよ(笑)。あ、芸能方面に強い△△△神社って知ってます? すごいご利益あるって評判…」
「えっと、そうじゃなくって…。◯◯さん副編だから、いろんな決定権持ってますよね? 僕、今日はこの後何も入ってないんです」(と無駄に体を密着させつつ私の腰に手を回す)
〈おぉん、なるほど~。ってことは、スタッフさん達が先に帰ったのはわざとか。こういうアプローチ法を容認してるのか推奨してるのか知らないけど、今後気を付けないとなぁ。面倒だなぁ〉 ←心の声
NO一択なのは当たり前ですが、かといって別段騒ぎ立てるわけでもなく、対処としては「早く社に報告入れなくちゃ」くらいの感じです。ただし、雑誌として彼を推す可能性はこの時点でほぼ消えます。万が一にも“色仕掛けで何とかなる媒体”と誤解されたら困るし、厄介な人、及び事務所とは一定の距離を保ちたいからです。
[身近な方のエピソード]
①ベテラン女性歌手/芸歴が長く、ヒット曲も多数持っている彼女。私が20代の時から可愛がってくれ、打ち上げの席では大抵「ここおいで〜」と隣に座らせてくれました。私だけでなく、女性記者は基本、目の届く範囲に配置していた印象です。ある日「いつも宴席でお気遣いくださってありがとうございます」と謝意を伝えたところ、「私はできる限り女性を守りたいの。若い頃、周りに男性しかいなくてね…。私のことは、誰一人守ってくれなかったから」と返ってきました。それ以上は語りませんでしたが、昔散々辛い思いをされたのであろうことが予想できる表情と声色でした。
②中堅男性俳優/喫茶店で連載の打ち合わせをしていた時のこと。他のスタッフさん達が煙草休憩に行き、2人きりになったタイミングです。
「この業界のこと、なーんも知らずに飛び込んじゃったんだよね。コネとかもないし、最初芝居もド下手だったしさ(笑)。今になって、『俺は枕(営業)することもなくここまで来れたんだなぁ』ってしみじみ思うよ」
上記は、次号のテーマが“これまでを振り返る”だとお伝えしたことにより、ふと出てしまった言葉だったのかもしれません。「俺“は”枕することもなく」という言い方は、そうでない人を実際知っているからこその表現だと感じました。
つまり何が言いたいのかと申しますと、中居氏やフジテレビをどれだけ叩いたとて、それは氷山の一角にすぎないということです。
埃が出る人なんて、業界内には数え切れないほどいます。私からすれば、彼らをここぞとばかりに糾弾している他局だって似たようなもの。「いずれ巨大なブーメランとなって、自分に返ってくるだけなんじゃ…?」と、大変冷めた目で見ておる次第です、ハイ。
◇余談◇
記者時代、自分が担当している歌手や俳優さんのご自宅へ伺うことは、男女問わずありました。一対一という経験はないものの、家での食事会に招かれること自体はそんなに珍しくないんじゃないかなと思います。料理上手な方はその腕を振るってくださいますし、何より外だと“人の目”を気にする必要がありますゆえ、店全体を貸切にでもしない限り、有名人がオフモードでリラックスすることは難しいですからね…。
ただ、私の個人名ではなく「▲▼▲▼▲」(←媒体名)を代表して、或いは一員として伺うわけなので、“たとえプライベートタイムであっても仕事の一環”という認識を、編集部全員が持っていたと思います。事実、上司への「いついつ、誰々のご自宅にお邪魔してきます。参加者は他に誰々の予定だと聞いてます」的な報告はマストでした。手土産代も交通費も会社持ちですし、「今終了しました」の連絡だって欠かしたことはありません。まぁ、弱小出版社と大手テレビ局では諸々事情が違うでしょうけども、一応ご参考まで。