先日、親愛なる台湾人の友達と久々に会ってまいりました。
ここ数年はヨーロッパで働き、最近母国へと戻った彼女。「もうすぐ東京旅行するから、その時会いたいけどOK? 彼氏も一緒でいい?」との連絡を受けて即快諾。彼氏さんは会社経営者で裕福な方だけれど、「高級店や老舗じゃなく、ごく普通の居酒屋に行きたい。そしてお刺身以外の魚料理も食べてみたい」と希望していると聞き、お手頃価格の海鮮居酒屋を予約しました。なんでも「(日本語の)手書きのメニューに憧れがある」とかで、「ぜひ生で見てみたい」んだそう。へぇ、それは興味深い。
ちなみに、各自話せる言語は──彼女が台湾語・北京語・広東語・英語・日本語、彼が台湾語・北京語・英語、私が日本語・英語少々、といった感じ。よって共通言語は一応英語なのですが、「日本語が一番難しい、使わないとどんどん忘れちゃう。だから日本語いっぱい使いたい」と彼女に言われたため、①彼女×私=日本語、②彼女×彼=台湾語、③彼×私=英語…という、なかなかカオスな状態で会話が進んだのでありました(笑)。
彼ご所望の手書きメニューは、各テーブルにあらかじめセットしてくれていた、B4サイズくらいの白い紙。黒い毛筆で[活][焼][煮][揚]等、調理法別に魚の名称が書いてある一般的なものでしたが、彼はとても喜び、且つテンションが爆上がりしていました。「何て書いてあるのかも、これが上手い字なのかどうかも全く分からない(笑)! だけど超クール!」と写真や動画を撮りまくる彼に、彼女は「子供みたい」と呆れながらも満面の笑み。ツーショット写真は事前に拝見していたものの、仲睦まじい姿を目の前で見て「良きカップルだな〜♡」とこちらもニッコニコになりました。
さてさて、開宴から約2時間。西京焼き、南蛮漬け、煮魚、天ぷら、鯛めし等々、美味しい魚料理を心ゆくまで堪能。ラストは〆の甘味とともに、店員さんが温かいお茶を持ってきてくれました。一口飲んで「やっぱほうじ茶って美味しいな〜♪」とほっこりしていたら、彼女が彼に何やら目配せ。
私:「え、何なに? 私変なことした?」
彼女:「違う違う! 彼に『ほら、綺麗でしょ』って言ったの」
私:「湯呑み? これ別に有田焼とかじゃ…」
彼女:「湯呑みじゃない、ジェスチャー。◯◯(←私の名前)はいつも、右手で持って左手で(湯呑みの)下支えて飲んでる。片手で持たないの、すごくエレガント。私それ見るの好き」
ド直球で褒められて照れたと同時に、普段意識していない部分ゆえ結構びっくりしました。内心「逆にそれ以外の持ち方ってある?」と思ったけれど、なるほど、確かに彼女も彼も、高台(*読み=こうだい)に左手を添えず、例えるならばお猪口のように片手だけで持っています。今まで気付かなかったけれど、高台に手を添えながらお茶を飲むのって、もしや日本人的な仕草なのかしら…?

彼:「◯◯さんは茶道のご経験が?」
私:「いいえ、一度も」
彼:「ではどなたに習ったのでしょう? ご両親ですか?」
私:「いや…ちゃんと誰かに教わった記憶はないんですよねぇ。多分、何かで見て覚えたんだと思います。それか、熱くて耐えられないから自然と手を添えるようになったのかも」
彼女:「熱かったら余計に下持たないよ、危ないよ! 冷たくなるまで待てばいいのに」
私:「そう言われたら確かにそうだなぁ。だけど、熱いお茶は熱いうちに飲みたいんだよね。小籠包だって、口の中を火傷してでもアツアツのまま食べたいもん」
彼女:「私、日本人のそういうとこ好きだよ♡」
私:「そういうとこって?」
彼女:「いつも真面目なのに、時々すごくクレイジーなとこ(笑)」
私:「ワハハ、分かる〜(笑)!」
彼:「ねぇ、今クレイジーって言わなかった? 僕のことじゃないよね…???」
彼女&私:「うふふ、内緒〜(笑)♪」
ものはついででございますからして、「日本人の振る舞いで、『これはよく分からない』ってことある?」と尋ねてみました。返ってきた答えは「プレゼントの開け方」。
「包装紙をものすごーく丁寧に開けるよね? 私は早く中見たいし、包装紙は捨てるものだからビリビリ破くよ(笑)。どうせ捨てちゃうのに、何でそんな綺麗に開けるの?」
「う〜ん、捨てる捨てないにかかわらず、なるべく丁寧に扱いたいからかな。プレゼントを用意してくれた相手へ感謝はもちろんだけど、包んでくれた店員さんにもありがとうと思うし。それに、ぐちゃぐちゃに開けると包装紙のかさが増えたりバラバラ散らばったりして大変でしょ? その点、綺麗に開ければ片付けるのも楽だから、結局そっちのほうが効率いいんだよね」
「わぁ、本当だ! いつも持って帰るとき、(包装紙を)紙袋に入れるの沢山時間かかる(笑)。次は私もそうしよう。あとあれだ、日本の店員さん包むテクニックすごいじゃん? あんな綺麗に包んでくれたら、私も開けるとき破かないかも」
なるほど、なるほど。日本では当たり前だけれど、特にハイブランドでなくとも、ごく普通のお店のスタッフさんたちがあそこまでピシッと美しく、そして手早く包んでくれる光景は、他の国ではあまり見ないような気が致します。
そういえば昔、飛行機で隣り合わせた外国人女性に「失礼ですが日本の方ですか? もし紙で鶴を折る方法を知っていたら、娘に教えてもらえないでしょうか」と頼まれた経験があります。
そんなことくらいお安い御用ですから、CAさんがご用意くださった便箋を正方形にカットし、まずはお手本用の鶴を一羽折って娘さんに見せました。彼女は驚くほど喜んで、「魔法みたい! 私もやりたい‼︎」と瞳を輝かせて私の隣に移動(お母さんと席をチェンジ)。気付けば合計五羽も折っていたのですが(笑)、紙を扱うこと自体不慣れなのか、“角をぴったり合わせてずらさないよう折る”という基本の部分が、彼女にとっては相当難しい様子…。小学3~4年生くらいに見えたので、「何回か説明すればできるようになるだろう」と思ってスタートしたものの、出発点である“ズレなく折る”のハードルがこれほどまでに高いとは予想外でした。急遽予定を変更し、「ずれたままでも、とりあえず一回全部やってみよう」と最後まで折ったけれど、出来上がったのは鶴ではなく単なる紙の塊…(汗)。やはり最初が肝心といいますか、細部が美しくないと、全体も美しくなりようがないのだという、至極当然のことを再認識したのでありました。
何度やっても上手くいかないことに飽きたのか、「もう大丈夫、教えてくれてありがとう」と再び席をチェンジする彼女。自席に戻るとこちら側へ手を伸ばし、「それ、みんなもらっていい?」と私が折った五羽の鶴を指差します。〈千代紙とか和紙とかじゃなく、何の変哲もない白い紙でいいのかしらん…〉と思いつつ、断る理由はないので全部プレゼント。「ありがとう!」と嬉しそうに受け取る彼女を見て、私とお母さんもにっこり。と~っても幸せな空間でした♡
お母さんはあらためてお礼の言葉を伝えてくれた後、こう言いました。「(日本に行ったことのある)同僚から話は聞いていましたが、日本の方は本当に親切でフレンドリーで優しいですね。そしてとっても器用。紙1枚だけで鶴を作るなんて、私たちでは考えつきもしません。仮に考えたとしても実践できない。日本の皆さんは、器用になるための特別な訓練を受けているのですか?」。日本人の器用さは、“それ用の訓練がある”と疑われるほどなのか…と思って吹き出しそうになったけれど、知り合ったばかりの私を相手にそういうジョークをかます雰囲気の女性には全然見えなかったので堪えました(えらいぞ私・笑)。
異国の方々と触れ合うと、当たり前だと思っていたことが実はそうでもなかったり、自分では気付いていなかった部分を「すごく素敵」と褒められて突如誇らしくなったりするから面白いですよね。時には逆もあるけれど、それも含めての異文化交流だからめちゃくちゃ楽しいです。あぁ、またどこか海外を旅したいなぁ♪