女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

表裏一体

7月に発表された、第167回芥川賞。受賞作は「おいしいごはんが食べられますように」(高瀬隼子)。候補作は「家庭用安心坑夫」(小砂川チト)、「ギフテッド」(鈴木涼美)、「N/A」(年森瑛)、「あくてえ」(山下紘加)。1935年の創設以来、芥川賞ノミネートが全員女性だったのは史上初だそうです。

 

9月24日、その部分にも言及した番組、ETV特集芥川賞を読む。~“正しさの時代”の向こうへ~」を観ました。

番組内では、5名の作家それぞれにきちんとインタビューし、執筆の意図や経緯、“この作品で描きたかったこと”等を質問。終始落ち着いた感じの作りで、大変見応えがありました。ところどころに挟まれる、女優・石橋菜津美さんの朗読(というよりお芝居に近かったですが)と相まって、未読の作品に関しても「読みたい!」という衝動に駆られましたね。

 

さてさて。作品そのものについては、一旦置いておくと致しまして。

小説の内容以外で、印象に残った場面は二つ。一つ目は、高瀬さんが「正直に言っていいのであれば、うんざりしましたね。まだそういうこと言うんだ…って」と答えたシーン。質問は確か、「初の“候補者全員が女性”についてどう思うか」みたいな内容だったと思います。私も似たようなことを感じていたので、すごく親近感を覚えました。

 

「87年という長い歴史の中で、“候補者全員が女性”ってことが一度もなかったのか。そんなんで男女平等とか…寝言は寝てから言ってくれ」

 

これが、6月に候補作が出揃った時の私の感想です。されど同時に、「もし私がこのニュースを報道する立場だったら、やはり『候補者は全員女性。創設以来初』と書くだろうな」と思いました。伝えるべき事実だと思うし、伝えることで「っていうか、87年間一度もなかったの⁉︎」と気付いてもらうことが出来る。報道には、事実を端的に伝える役割ももちろんありますが、“気付き”や“考えるきっかけ”を提供する役割もあると、個人的には思っています。

 

二つ目は、5名全員に投げかけていた質問。「ユートピアとは? ディストピアとは?」

 

その答えはどれも、各自の個性が出ていて興味深かったです。でも、私の意見と近しいものは、5つの中にはありませんでした。

私は、ユートピア(理想郷)もディストピア(絶望郷或いは暗黒郷)も大差ないというか、結局同じものなんじゃないかしらんと考えています。ある人にとってはユートピアでも、またある人にとってはディストピアだったりするし、「生まれてきた時点でラッキー&ハッピー♪」と感じられる人にとっては、どんな世界だってユートピアになり得ます。

一つ確かなのは、「万人にとってのユートピアなど存在しない」ということ。幸せの定義がそれぞれ異なるように、ユートピアの定義だってみんなバラバラです。“その人なりのユートピア”は、100人いたら100通りだろうと思います。

 

あとは、これを言ってしまうと元も子もないのですが、私はユートピアディストピアへの関心がそもそも薄い…(笑)。それこそ、小説とか漫画とか、フィクションの世界で描かれるユートピアもの・ディストピアものは大好きだけれど、“現実の話”となると途端に興味が失くなります。だから、「最後の最後に、何でそんなつまんない質問するんだろう?」(失礼・汗)と思ってしまった。まぁ、あの問いかけを「つまらない」と感じる人もいれば、「面白い」と感じる人もいるでしょうけどね。


何はともあれ、作家の素顔や制作意図等をちょっぴり覗くことが出来て、とっても心躍る1時間でした。変にごちゃついていない作りと、集中して(CM等で途切れたり間延びしたりせず、且つ確かな技術を持ったアナウンサーの聴き取りやすいナレーションに乗せて)観られる良質な番組というのは、この時代において貴重だしありがたいですね。欲を言えば、無駄なテロップを一層少なくしていただけたら尚ありがたいです、ハイ(笑)。