女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記

余っているのに足りない、足りていないのに余る

学生時代、いくつかのアルバイトを経験しました。コンビニに始まり、パン屋さん、某有名巨大施設、高層ホテル内のレストランなど。


最初のバイトは高校生の時、コンビニでした。生まれて初めて“自分でお給料を稼げたこと”も嬉しかったけれど、「社会勉強として実に有意義な時間を過ごさせてもらった」と、今でも感謝しています。


コンビニで働いてみて感じたのは、「世の中って、本当にいろんな人がいるんだなぁ」ということ。毎日来てくれるお客さんはもちろん、週1回だけアイスを買いに来る老夫婦とか、成人誌やコンドームを恥ずかしそうに買うお兄さんとか、突如駆け込んできて「香典袋ありますか?」「ストッキング、置いてます⁉︎」「トイレ〜!」ほか切羽詰まっているであろう状態のお客さんとか、そりゃもういろいろ。


20年以上前なので、業務も今のコンビニよりずっと少なかったし、何よりオーナー(兼店長)さんが穏やかなタイプの男性だったせいか、全体的にのんびりしていてすごく居心地の良いお店でした。常連さんとは「こんにちは」とか「今日はお仕事早いんですね〜」とかの会話を交わし、たまに差し入れを頂くことも。特にアイスの老夫婦は「高校生なのに働いて偉いね。私達には子供がいないから、孫みたいでかわいい」と言ってくれ、私の分までアイスやらお菓子やらを買ってくれることもしばしば。失礼ながらそんなに裕福そうには見えなかったため、「お気持ちだけで十分です」と伝えたのですが、ご夫婦は「まぁ、しっかりしてる! いいの、それくらいさせてちょうだい」と言うし、オーナーも「お客さんの希望なんだから別にいいんじゃない?」と肯定的。今ならありがたく厚意に甘えるけれど、当時は「特定のお客さんにそんなことしてもらうのって、店員としてどうなんだろう…?」と高校生なりに悩んだりしていました。何て初々しい16歳の私(笑)。


それはさて置きまして。コンビニ店員の仕事の一つに、“廃棄食品の処理”があります。店頭に並んでいる商品の中から、消費期限の切れた(正確には切れそうな)食料品を選別して廃棄するという作業です。バイト初日は驚きましたねぇ。「こんなにもたくさん捨てられている」という事実に。お弁当やパン、サンドイッチ、デザートに至るまで、毎回カゴ一つでは収まりきらないほどの量でした。「もったいないなぁ」と思いつつも、廃棄商品を持ち帰ることは禁止されていたし、そもそも実家暮らしなので基本、食事には困らない。3日もすれば「単に私が知らなかっただけで、そういうもんなのかもしれない」とすっかり慣れ、淡々と作業を進めるように。それが多少行き過ぎたのか、はたまた若いのでパワーが有り余っていたのか、廃棄商品への扱いが段々雑になっていきました。「どうせ捨てちゃうんだし、キレイに入れる必要はない。時間短縮!」という思いもあり、カゴに投げ入れるまではいかないけれど、乱雑に重ねる日々。サンドイッチの上にお弁当を乗せたり、お弁当を縦に入れたり。けれどある時、そのことに気付いたオーナーから「ちょっといい?」と呼び出されました。


怒られるのかなと思っていたら、話は全く予想していない内容だった。「お店としては廃棄商品だけど、実は全部を廃棄してるわけじゃない。だからもう少し丁寧に扱ってほしい」と告げられ、「え…意味が分からない」と困惑。よくよく話を聞くと、つまり「困っている人に暗黙のルールで提供している」とのこと。大っぴらには言えないけれども、近くにホームレスの人が何人かいて、その人達に「大体何時頃、この場所に置いておきます」と伝えてある。だからあまり雑に扱わないでほしいんだという話でした。


私は再び驚きました。そのコンビニ付近で、ホームレスらしき人を見かけたことは一度もなかった。オーナーによれば、結構な距離を歩いてきて、しかも「(コンビニ周辺やオーナーに)迷惑を掛けたくない」から、なるべく目立たないよう深夜にしか来ないというのです。なるほど、そうか…。現実にそういう暮らしを送っている人がいて、オーナーは黙って人助けをしてるんだなぁ、すごいなぁと思いました。以降、廃棄商品も丁寧に扱い、誰にも口外せず、今日まで生きてきました。でも、年末年始の様々なニュース(各地での炊き出しに、今までは見られなかった若年層や女性の姿もある等)を目にして、オーナーのことを鮮明に思い出した。


オーナーは、たまたまホームレスの人が廃棄食品を大量に持ち帰る場面を目撃してしまい、声を掛けたんだそう。するとホームレスの人は、咎められると思ったのか「すいません」と繰り返し、「もう二度と来ませんから」と置いて帰ろうとした。オーナーが「怒ってるんじゃありません。どうしてそんなにたくさん必要なんですか?」と尋ねると、「ホームレス仲間がいるんです。足の悪い人もいるので、彼らの分もと思って…」との答え。オーナーは、仲間の人数や年齢などを確認し、「分かりました。毎日人数分置いておくので、必要なら◯◯時頃取りに来てください。ただし誰にも言わず、私と会っても知らないふりをしてくださいね。本来は禁止されている行為なので」と伝え、その日から継続している習慣なんだと明かしてくれました。私は、いろんな意味で「最初のバイト先がここで良かったなぁ」と思いました。


農林水産省の発表によると、日本の食品ロスは年間612万t。国民一人あたりでは一日132g、毎日お茶碗一杯分くらいの食品を、一人一人が捨て続けている計算になるそうです。世界規模では年間13億tの食品が廃棄されている一方、全人口の9分の1は飢餓状態。非常にアンバランスですが、正直言って、今は他国より自国のことを考えるのが先だと思います。飽食と言われる日本で、現在、満足にご飯を食べられない人がいる。原因は貧困、育児放棄、失業ほか様々だと思うけれど、この状況下では誰も他人事ではありません。


余っているのに足りない、足りていないのに余る。


この矛盾をどうにか出来る方法、上手く解決出来る方法、私には全然思いつかないなぁ…。何事においても“バランスよく”って、簡単なようで実際はすごく難しい。