かれこれ20年近くの付き合いになる友人・H。彼女と長電話をしている最中、ふいにこう訊かれました。
「ところでさ~、◯◯◯(←私の名前)は今、どんな下着つけてる感じ?」
「え…変態…?」と訝しんだらば、「違うわーい(笑)! でもごめん、質問が悪かったよね。実は私、下着のことでちょっと悩んでるんだ。意見聞かせてくれないかな」と返ってきました。
Hの話をざっくりまとめますと──。
「華やか且つセクシーな下着が好きだから、色は赤とかネイビーとかの濃い目で、レースがいっぱい付いたブラ&ショーツを愛用している。ただ、来春には長男が高校へ、次男が中学へ上がる。思春期真っ只中の息子2人に、“セクシー全開な下着”…つまり、『母親』ではなく『女』の部分を見せていいものなのだろうか(*Hは地方在住で、そこは年間降水量が非常に多い県。よって洗濯物は基本、浴室乾燥機か部屋干しゆえ、家族の衣類全般が自然と目に入る環境)。加えて、夫とはレス状態に近いため、どんなに可愛い下着をつけても褒めてはくれない。だから、このタイミングでもっと地味な下着に変えてみようか迷っている。参考までに、◯◯◯の下着事情を教えてほしい」
話を聞いてまず生まれたのは、「あの小さかった子たちが、もう高校生と中学生になるのかぁ。昔は年1〜2回H宅へ泊まりに行って、一緒に遊んだりお風呂入ったりもしたけど、2人はきっと覚えてないだろうなぁ。何だか親戚のおばちゃんになった気分…」的な感情でしたが、ひとまずそれは置いておくとしまして(笑)。
言われてみれば、「同世代の女性たちがどんな下着をつけているのか?」というのは聞いてみたいような気も致します。なお、Hは長年「毎日が勝負下着」という生活を送っているそうで、如何なる時も気合いの入った下着をつけているんだとか。一方私は計5種類。その内訳は──。
①いわゆる勝負下着(上下セットで全体的にゴージャスなもの)
②上下違い(上はエレガントだが、下は機能性重視のスポーティーなもの、もしくはサニタリーショーツ)
③運動時用(ヨガやウォーキング等で着用。スポーツメーカー製)
④自宅及びご近所用(ブラトップ等)
⑤就寝時用 (ナイトブラ)
Hに上記を伝えたら、「ちゃんと使い分けててすごいね! 私もナイトブラは持ってるけど、シーンごとに下着を変えるっていう発想がなかったから結構びっくりだよ」と驚かれました。私からすると、用途別に下着を用意するのは普通というか、ごく自然なことです。まぁ、Hは運動する習慣がないし、私と違ってたわわなバスト (ちなみにGカップ♡) だから、スポーツブラやブラトップだと、ホールド力とかシルエットとかに不安があるのかもしれませんけどね。
ただし、「ワイヤー入りブラは卒業した」という点は共通していました。
ワイヤー入りだと、確かに“寄せて上げる”効果は抜群だし、安定感もホールドカも申し分ありません。私もHも、30代半ばくらいまでは頼れる主力として大変お世話になりました。なれど、30代後半に差し掛かると、圧迫感や締め付け感、果ては息苦しさまで感じるように…。それゆえ、寄せて上げる効果よりも“着用時の快適さ”を求め、ノンワイヤーへと移行したのでございます。
また、この頃になると、ノンワイヤーブラ自体がものすご〜く進化。昔と比べてホールドカが格段にアップし、「Gカップの胸も、ワイヤー無しで十分支えてくれる」(H談)ようになりました。デザインも素敵なものがどんどん増え、本当にありがたい限り。各下着メーカーさんのたゆまぬ努力に感謝・感謝です。
さて。肝心の“地味な下着に変えようか問題”につきましては、思った通りのことを伝えました。
「あくまで私の意見だけど、下着って女性にとってすごく大事なアイテムだと思うんだよね。毎日のことだし、朝起きてつける時も夜外す時も、絶対目に入るじゃん? さっき自分で『華やか且つセクシーなものが好き』って言ってたよね。なのに好きでもない地味めの下着つけたらさ、朝からテンション下がっちゃわない? それに、Hは“母親”でもあるけど“女”でもあるわけじゃん。自分の子供に対して、母親の面しか見せちゃいけないなんてこと、私はないと思う。そりゃあ思春期だし、いろいろ配慮したい気持ちは分かるけどさ、彼らのためにHが我慢する必要はないんじゃないかな。好きな下着つけて、好きなことやって、楽しく生きてる姿見せるほうがよっぽど健全だと思うんだけど。ま、私は男きょうだいいないし、男友達とか歴代彼氏からも“母親の下着事情”なんて聞いたことないからよく分かんないけどね(笑)!」
そして。多彩な相槌を繰り出しながら私の意見を聞いていたHが、気付いた時には一言も発さず黙りこくっているではありませんか。
「おーい、聞いてる? つか寝てる(笑)?」
「…グスン…」
「…えっ⁉︎ なんで泣いてんの⁉︎」
「だってさぁ、もう十何年も妻と母親の役割やってきてさぁ、グスン…。子供産んでからは女でいる時間なんてなかったし、“一人の女性”として扱われたのって、思い出せないくらい昔のことなんだもん。なのに『女の面も見せていい』なんて言われたらさぁ…そんなの泣いちゃうよ。もし電話じゃなくて直接会ってたら、私◯◯◯に抱かれてるとこだったよ〜ぅ…グスン」
な、なるほど…。
Hは東京出身にもかかわらず、縁もゆかりもない地方都市(旦那さんの出身地)へ嫁いだ強者です。「頼れるのは夫ただ一人」の状態で見知らぬ土地へと移り住み、約2年後には長男を出産しました。20代後半で結婚して以来、“故郷ではない場所”で「妻」と「母」の役割をこなし続けています。旦那さんの仕事は多忙+不規則だし、近くに頼れる人もいないしで、恐らくワンオペに近い形で育児をしてきたのでありましょう。彼女はあまり愚痴をこぼすタイプではないけれど、心の奥底では思うところが山ほどあったと想像できる。しばらく泣きじゃくった後、「女としてこのまま枯れていくのかと思うと虚しい」「(レスが続くなら)ちょっとくらい浮気してもバチは当たらない気がする」的なことを口にしていました。
途中、「◯◯◯は現役バリバリでしょ? 旦那さんめっちゃ優しそうだし、羨ましい限りだよ」と言われましたが、まさか「レス以前に、彼と交わったこと自体一度もない。その対応策として女風を利用している」とは言えませんから、何とか濁して話題を逸らせた次第…(汗)。でも、Hとはこの先も良い友人関係が続くと思うので、20年くらい経ったら真実を話せたりするのかもしれません。もしその時が来たら、彼女めちゃくちゃ驚くだろうな〜。それはそれで、ちょっと楽しみだな〜♪