生成AIについての記事第二弾を書いている最中、大変ショッキングな、出来れば嘘であってほしい訃報が飛び込んできました。漫画家・芦原妃名子さんが亡くなられたというニュースです。
芦原さんは、「姉系プチコミック」(小学館)で連載中だった漫画「セクシー田中さん」の作者。1994年にデビューを果たし、代表作に「砂時計」「Piece」「Bread & Butter」等がある人気漫画家さんです。昨秋、日本テレビ系列で「セクシー田中さん」がドラマ化されたため、そちらをご覧になった方もいらっしゃることでしょう。私はもともと原作漫画を単行本にて読んでいたのですが、ドラマ化を知った際、「まだ連載途中なのに映像化するんだ。結末どうするのかなぁ?」とぼんやり思ったことを覚えています。でも結局ドラマは観なかったから、その後あまり気にしていなかった。再び目にするニュースが、こんなにも悲しい内容だとは予想だにしませんでした…。
私は本と同じくらい漫画も大好きで、日頃からいろいろなジャンルの漫画を読んでいます。漫画を原作としたアニメ・映画・ドラマが多いのは今に始まったことではないけれど、愛読している漫画がメディア化されることを知った時の“心の声”は、概ね次のような感じ。
①ボイスコミック化、ドラマCD化、朗読劇化
「やった〜♪」(どれも声優さんが演じてくれるため、とっても安心&期待大。歓喜‼︎)
②アニメ化
「嬉しい!」(キャラクターデザインを確認し、原作のテイストから大きく外れていない限り視聴)
③2.5次元舞台化
「あぁ、そうですか」(一応キービジュアルは確認。それ以降は特に何もせず)
④ドラマ化
「実写化ねぇ…」(局がテレビ東京もしくはNHKだったら、とりあえず初回は観る。その他の民放であれば、キャストや制作陣、キービジュ次第で視聴する場合もあり)
上記の通り、純粋に喜びを感じるのは①②のみです。実際、①で原作のイメージを壊されたとか、「違う」と感じたことはほとんどありません。②はキャラデザが原作のテイストとかけ離れていたり、不要なアニオリを入れ込んできたりして落胆することもなくはないけれど、基本的には嬉しいです。③④は、原作の世界観を見事に表現してくれるケースも稀にあるものの、これまでの経験上、大抵わけの分からない改変をされたり、“原作に対して愛がない”ことが丸わかりの作りだったりする。よって最初から期待していない…というか、そもそも実写化なんて少しも望んでいません。
今さらですが、漫画家さんって本当に本当に凄いと思うんですよ。ストーリーを考えて、キャラを生み出して、コマを割って、絵を描いて、台詞を喋らせて、時にはキャラの表情や目線、指先一つ、或いは風景のみで、登場人物の心情だったり時の流れだったりを読み手に伝える──文章だけでも、絵だけでも、台詞だけでも相当骨が折れるのに、クリエイターとしての要素が何種類も詰まっているため、“幾つもの才能”がないと就けない職業だと感じています。そして、作品づくりに伴う「生みの苦しみ」もまた、想像を絶することと思います。
ゼロイチというのは、どの世界においても言葉では言い尽くせないほど大変です。「0から1」と「1から2もしくはそれ以上」は、根本的に全っ然違う。原作を愛し、深く理解し、最大限尊重してくれる優秀な脚本家さんも数名いるけれど、今回はそうではなかった。残念なことですが、今も昔も、そうじゃないケースのほうが圧倒的に多いと感じています。加えて、原作者の立場があまりにも、それはもう不自然なほどに弱い。何もないところから作品を生み出しているのは、紛れもなく原作者である漫画家さん達なのに…。
この場をお借りしまして。
素晴らしい作品を私たちに届けてくださる漫画家の皆様方へ。読者が、ファンが一番に望んでいるのは、作品のメディア化では決してありません。皆様方が表現したい世界を、物語を、思う存分、描きたいように描いてくれることです。そりゃあアニメ化されたら嬉しいけれど、制作にあたり、もしも原作者としての信念を曲げなければいけないようなら、きっぱり断ってくれて全然大丈夫ですし、読者としてその姿勢を強く支持致します。
我が子のごとく大切であろう作品を無理してメディア化する必要はないし、仮にメディア化を承諾した後でも、「こんな改変は納得できない」「当初の約束と違う」「自分が表現したかったのはこういうことではない」等と感じたら、制作途中だろうが何だろうが、その時点でどうぞストップをかけてください。読者が悲しむとか、周囲に迷惑をかけるとか、そんなふうに思う必要は全くないです。精神的に辛かったり、ダメージが大きすぎて仕事が手につかなかったりしたら、迷わず休養してください。心身の健康が何より大事ですし、ファンは好きな作品をいつまでも、いくらでも待てます。読者のことはお気になさらず、安心して休載してください。もし「読者に待たれること」…それ自体が苦しいのであれば、思い切って“筆を置く”という選択肢もあります。
ですからどうか、死だけは選ばないでほしいです。いち漫画ファンとして、心の底からお願い致します。命を絶たないでください。切に切に、お願い申し上げます。