先月末より始まったドラマ「作りたい女と食べたい女」(NHK/月曜~木曜、22:45〜23:00)を楽しく視聴しています。
原作は、ゆざきさかおみ氏の同名漫画。料理が趣味で、「一人暮らしだけど、本当はもっとたくさん作りたい」と願う野本ユキ(比嘉愛未さん)と、食べることが大好きな春日十々子(西野恵未さん)の交流を軸に、“女性の生きづらさ”や百合要素を盛り込んだ作品です。メインは“飯テロ”ゆえ、観ながら「わぁ、美味しそう♪」とどうしても小腹がすいてしまうのが悩ましいですが(笑)、食事以外のシーンも見どころ満載。
例えば。野本さんが会社でお弁当を食べていると、男性社員から「それ手作りですか? すげぇ! 絶対いいお母さんになるタイプっすよね」的な言葉を掛けられます。「自分のために好きでやってるもんを、『全部男のためだ』って回収されるの、つれぇ(辛い)な~」と心の中で嘆き、結構ブルーになる野本さん。一方春日さんも、飲食店でからあげ定食を注文したら、同じものを頼んだ男性客のご飯より明らかに量を減らされ、「少なめにしときましたよ」と親切心で言われてしまいます。
どちらも“悪気がないのは分かってるけど、無意識にジェンダーバイアスをかけられてモヤッとする”という気持ちがよく表れていました。モヤッとしつつも、別段反論せずやり過ごす野本さんに対し、「(ご飯)普通についでください」と店員さんの目を見てはっきり意思表示する春日さん。2人のそういった“違い”も面白いです。
原作漫画は未読ゆえ、今後の展開や結末は知らないのですが、ドラマ放送前の宣伝番組を観たところ、女性同士の恋愛もきちんと描かれる模様。ドラマにしてもアニメにしても、BL作品と比べて百合ものは圧倒的に数が少ないですから、そういう意味でも大変注目しております。ちなみに、放送は残り3話。12/14(水)が最終回ですので、気になった方は観てみてくださいませ。
それはそうと。先の宣伝番組を観ている時に、突如思い出したことがあります。
以前、映画監督で1人、俳優さんで1人、「LGBTの役は、出来る限り当事者が演じるべきだ」という旨の発言をしている方がいました。2つともインタビュー記事(←時期も媒体も別)だったため、どういうテンションや表情で語ったのかは分かりませんが、それらを読んだ私の第一声は「…は?」。
もちろん、“当事者が望ましい役”というのはあると思います。時代劇なら馬に乗れたほうがいいだろうし、「筋肉隆々」の設定なら、ひょろひょろボディーでは説得力に欠ける。でも、LGBTは違います。LGBTでない人がLGBTを演じる──プロの俳優なら、そんなことは出来て当たり前です。実際にLGBTであろうとなかろうと、帰国子女であろうとなかろうと、左利きであろうとなかろうと、サイコパスであろうとなかろうと、“さもそうであるかのように見せる”のが役者の仕事。なのに、「LGBTの役は当事者の中から選ぶべき」と考えている人が存在するとは驚きました。
特に俳優さんのほうは、「自分で自分の可能性を狭めちゃって、本当にいいの…?」と感じずにはいられません。その人は「役の設定がLGBTなのであれば、役者自身もLGBTのほうがいいと考えています」と語っていました。つまりは逆も同じなわけで、「僕は、“自らのセクシュアリティと異なるセクシュアリティの役”を演じることが出来ない俳優です」と宣言しているようなもの。もし私が制作する側の人間だったら、そこまで役の幅が限られる俳優を「ぜひ起用したい」とは思わないでしょう。実力があったとしても、「“演じられる役”が極端に少ない俳優の使いどころは決して多くない」と予想できるからです。
得手不得手はあるにせよ、基本的には“何でも演じられる”のが優れた役者だと思っています。よって、いち視聴者の意見としましては、「LGBT役の俳優が、実生活でもLGBTか否かなんてどうでもいい。そんなことより演技で魅了してくれ、圧倒してくれ。平伏したくなるほど感動させてくれ〜!」。これに尽きますね、ハイ(笑)。