女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

宣言しない宣言

先日、男友達・A(仮名)と食事に行ってきました。彼はゲイで、現在LGBTQ+に理解ある職場で働いているのですが、かつては苦労の多い時期も…。当時、彼の話をよく聞いていたのだけれど、今回久方ぶりとなるディナーへのお誘いということで、「何かあったのかもな〜」と予感しつつ待ち合わせ場所へ向かいました。


美味しいタイ料理を食べながら、近況報告やら雑談やらをしていた最中、ふいに彼が言います。

「前から感じてはいたけどさ、◯◯(←私の名前)ってやっぱ“無自覚のAlly”だよね」

簡単に説明しますと、Ally=アライというのは、LGBTQ+の当事者たちに共感し、寄り添いたいと考え、支援する人のことを指します。語源は英語のally(同盟、協力者、味方…等の意)。私はアライを自称したことはありませんが、彼らへの偏見もなく、「実はLGBTQ+なんだ」と打ち明けられても「へーそうなの一」くらいの薄いリアクションしか取らないせいか、周囲から「アライなんだね」と言われたことは過去にも何度かあります。


「んー、別に自分がアライだと思って生きてないけど、当事者のAがそう感じるならそうなのかもね。その点に関してこだわりとか全くないし、勝手に決めてもらっていいよ(笑)」

「何で俺が決めるんだよ(笑)! でもさ、そういうとこも含めて助かってる。一緒にいてめっちゃ楽。あと、アライって言葉も知ってくれてて助かるよ」

「そりゃまぁワタクシ、“言葉への感度”はだいぶ高いほうですからの~♡ けど、今の職場ってすごくいい環境だよね? 会社の人たちは一緒にいて楽じゃないのん?」

「もちろんありがたいと思ってるし、感謝もしてるけど、楽かっていうと少し違うかもしれない。あくまでも仕事上の付き合いだしね。あ、それで、この前会社のイベントでちょっと凹むことがあって…」


彼の話を要約すると、こんな感じです。

コロナ前まで毎春行われていた「親睦BBQ会」(参加者は社員、及び社員の家族)が数年ぶりに復活→社員の家族がたくさん来る→当然、家族の皆さんが全員アライだとは限らない→中にはLGBTQ+に対して否定的な人もいて、それが態度や表情に出てしまうケースもある


「社内では、ゲイっていう理由で差別されたり不当な扱いを受けたりってことが、ありがたいことに全然、本当に全っ然ないわけ。取引先も似た理念のところが多いし、仕事は本当にスムーズなんだ。だから、ちょっと感覚麻庫しちゃってた部分もあるんだろうね。久しぶりに、他人からの“嫌悪感”とか“拒絶するエネルギー”とかを真正面から、しかも逃げられない場所でまともに喰らっちゃって、思ったより落ちちゃってさ。言葉にはしなくても、そういうのって伝わってくるから…。んで、真っ先に浮かんだのが◯◯の顔だった。『◯◯ならフラットに話聞いてくれるだろうなぁ』って。もちろん、『自分はアライです』って宣言してくれてる上司とか同僚とかの行動はすごい嬉しいんだけど、宣言してなくても『この人は味方だ。この人には話しても大丈夫だ』って思える友達がいるのって、俺の中ではめちゃくちゃ重要なんだよ。それに、◯◯って基本ポジティブじゃん? 俺を励ますための一時的なポーズとかじゃなくて、生き方のベースがポジティブ。いつでも『生きてさえいりゃ何とかなるっしょ〜』的なスタンスっつーかさ(笑)。今日はそのマインドを分けてもらいたくって」


褒められているのかどうかよく分かりませんでしたが(笑)、何にせよ、頼ってくれたのは純粋に嬉しかったです。そして同時に、「性的マイノリティの方々は、こちらが想像する以上に生きづらさを抱えているのかもしれない」とも思いました。

日本におけるLGBTQ+の割合は、人口の約10%だと言われています。これを多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれでしょうが、割合で言うと左利きの人と同じくらいですから、少数派であることは間違いありません。

 

Aとの食事の数日前。ファミレスでお茶をしていた時、隣席5人組の会話が耳に入ってきました。

「最近さぁ、BLドラマめっちゃ多くない?」

「確かに〜。深夜とか、いろんな局でやってるよね」

「やってても観なければ別によくない?」

「私も観ないけど、CMで流れる時あるじゃん。あれは自然と目に入っちゃうよね。まぁ、イケメン同士だから綺麗でいいけどさ」

「それな。イケメン同士じゃなきゃ成立しないもんねぇ(笑)」


異性間の恋愛ドラマにおいても、基本的に主役は美男美女でないと成立しないと思うのですが、恐らくラストの「(笑)」はつかないだろうと予想致します。言葉を選ばずに記すなら、全体的に嘲笑する感じといいましょうか、小馬鹿にしたようなニュアンスが含まれている印象を受けました。当事者でない私が聞いても気分は良くなかったのですから、もし近くにLGBTQ+の方がいらした場合、Aじゃないけど「落ちちゃう」可能性も大いにある。直接何かを言われたり、それこそ“拒絶するエネルギー”を感じ取ったりしなくても、街中で偶然“落ちる要因”となるものに出会ってしまう…。その確率が、彼らはマジョリティよりずっと高いのかもしれない、と感じました。


私にできることはそう多くないけれど、今後もAにとっての止まり木といいますか、心の拠り所みたいな存在でいられたら、それは大変光栄&幸せなことだなぁと思います。セクシュアリティのことを気兼ねなく、そして正直に話せる相手──私は引き続き、特に宣言するわけでもない「無自覚のAlly」でいようと思っています。

 

 

*Aさん登場回です。メインはドラマのレビューなのですが、Aさんについてもう少し詳しく知りたい方はどうぞ。                 ↓↓↓