女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

学びの恋〈前編〉

Eさんとの恋が唐突に終わった、何日か後の日曜日(*Eさんとの物語は、「過去の恋愛」カテゴリー内「本気じゃない恋」に掲載)。“別れの発端となってしまったメール”の送り主・Tさん(男友達)と食事に行く日です。美味しいイタリア料理を食べながら事の顛末を話すと、彼は声高らかに大爆笑。「ごめん、ごめん。君が臨場感たっぷりに喋るから、ちょっと面白く聞こえちゃってさ。変なタイミングでメールしたみたいで悪かったなぁ。今日は俺が奢るよ、好きなだけ食べて」と言われたので、高級な肉をガンガン注文してやりました(笑)。

 

彼と知り合ったのは、食事をする約1ヶ月前の異業種交流会。多くの男女が参加していましたが、話していて一番面白かったのが彼でした。こちらは出版社勤務の文系&生涯文化部、あちらは製薬会社勤務の理系&生涯運動部。互いにずっとその畑で生きてきたため、真逆の人とは相容れないことが多かったのに、少しの会話で意気投合。いえ、意気投合というより“きちんと議論出来た”と言ったほうが正しいかもしれません。今までも理系の人と話したことはあるけれど、毎回「もっと論理立てて話せ」的なことを言われてやや敬遠。その昔、理系の人に「頭が良いんだから、話聞いた後に自分の中で整理してよ」と言った時、「非効率的だ。なぜ最初から最短ルートを目指さない?」と返されて心が折れたこともあったっけ(笑)。

 

Tさんは、お茶をしたりメールをしたりする、ごく普通の友達です。彼は人当たりが良くいつも笑顔、物腰も非常に柔らかいけれど、自分の意見や主張をはっきり口に出すタイプ。見た目の印象とギャップがあるため、「それで引いていく女子もいる」と言っていました。でも私はきちんと自己主張できる人が好きだし、加えて彼は“人の意見”に耳を傾けることも出来たので、何の問題もありません。世界情勢、政治、スポーツ、最近読んだ本や聴いた音楽のこと、お互いの仕事について等々、意見が合おうと合うまいと、常に建設的な話が出来て楽しかった。ちなみに、Tさんの基礎データは〔175㎝・68㎏、細マッチョ、趣味マラソン&勉強、理系、高学歴、野心家、メガネ男子、ディベート好き、笑顔がめちゃくちゃカワイイ、2人兄妹、横浜市出身/夜の生活=S〕という感じです。

 

彼は日頃からマラソンやフットサルで体を動かし、自宅でも筋トレしているだけあって、大変美しく引き締まったボディーの持ち主。ある時「ヨガ以外にも運動したいんだよね。いきなりジョギングは無謀かなぁ?」とメールで相談すると、「いいものあるよ。あげよっか?」と画像付きの返信が。「家でのトレーニング用に買ったんだけど、最近は外で長距離を走るから使ってない」という小型ランニングマシンを譲るとの提案です。「え、いいの? じゃあ取りに行くね」「君には無理だよ、かなり重いから。俺が持ってく。組み立ても必要だし」ということで、自宅へ持ってきてくれる運びとなりました。

 

この時、私32歳、彼31歳。友達とはいえ、一人暮らしの女性の家を男性が訪ねる。年齢的にもいい大人…となると、時間設定が大事になってきます。「夜は絶対ダメだから、ちょうどいいのは昼前かな? 11時待ち合わせにすれば、遅くとも13時までには組み立て完了→御礼にお高めのランチと美味しいスイーツをご馳走する→つまり家を出られる!」と脳内でシミュレーション。だがしかし、現実というのは大抵予想を超えてくるものなんですよねぇ。

 

11時に駅前で待ち合わせて、15分後には自宅着。そして組み立ては約40分で終わり、使い方とお手入れ方法は「取説に書いてある」のでレクチャーなし(笑)。「いざランチへ」とお財布を持ったところで、まさかの「お腹すいてない。っていうか、手土産あるからこれ食べようよ」とそれはそれは魅惑的なフィナンシェを差し出されました。私も私で「わぁ、美味しそう♪」などと言ってしまい、「コーヒーある?」「あるよ、ちょうど頂き物のドリップパックがたくさん」と墓穴を掘る結果に。反射的に、“コーヒーを淹れる以外の道”を絶ってしまったのでした。

 

さて、当時私が暮らしていたのはデザイナーズマンション。メゾネットタイプで、半地下階がキッチン&リビングです。室内にある、10段ほどの階段の途中にトイレとお風呂(ガラス張りで部屋から丸見えという大変バブリーな仕様)、階段を上がりきると寝室がお目見え。リビングにはローテーブル、バランスボール、無印良品の“通称・人をダメにするソファ”(大きめのビーズクッション/メーカー正式名称は“体にフィットするソファ”)を配置していました。ソファは一人掛け用なので、彼にはそちらに座ってもらい、私はバランスボールに跨りゆらゆら。「2人掛けのソファ置いてなくて良かった~」と安堵しつつフィナンシェを頂き、しばし談笑。すると、彼が「実は使ったことないんだよね。試してもいい?」とバランスボールを所望しています。どうぞ、どうぞと場所を交代して彼の筋トレタイム。さすがに体幹がしっかりしている。「こんな感じなんだね、ありがとう。あ、移動しなくていいよ」。

 

彼はバランスボールを離れてソファへと戻ってくる間、1秒たりとも私から目を逸らしませんでした。マズイと思ったけれど、まるで蛇に睨まれた蛙のように一歩も動けない、立ち上がれない。ゆっくりと彼の顔が近づいてきて、そのままそっとキス。優しい声で「イヤ?」と訊かれ、「イヤじゃないけど…」と答えた途端、完全にスイッチが入った模様。かなり長い時間、激しめのキスをしていたかと思います。でもまだ昼間だし、寝室には階段を上がらないと行けないし、これ以上先に進むことはないだろうと予測。

 

ところが、彼の舌が、私の首やら耳やら鎖骨やらにどんどん移動。いつの間にか、シャツの中に手が入っているではありませんか。「待って、ちょっと待って!」「何?」「キスだけじゃないの?」「さっき『イヤじゃない』って言ったよね?」「『キスはイヤじゃない』って意味だよ」「見解の相違だな。今から止めるの、俺無理」。そ、そうなのか…。でもキスもすごく気持ちいいしお互いフリーだし、「まぁいいか」という気になり「だったらベッド行こうよ」と促しました。けれど彼は「ここがいい。真昼間からこんなところでっていうのがいいんだよ」と動こうとせず、結局最後までソファの上。中身がビーズだから不安定だし、室内は明るいしで全然集中できなかったけれど(笑)、「会話の相性もいいが体の相性もいい」とお互い感じたようで、この日からTさんと付き合うことになりました。

 

翌週、彼のマンションへ行ってびっくり。必要最低限の物しかない殺風景な部屋、衣類がきっちり色別に収納されたクローゼットは想定内でしたが、驚いたのはデスク周りです。現役大学生のごとく、教材や参考書、医学誌等がズラリと並んでいる。「すごいね、学生みたい」と感心していたら、「だって勉強って一生するものでしょ。むしろ社会人になってからのほうがアップデート必要じゃない?」と言われて一瞬めまいが。今までそういうふうに考えたことはなかったけれど、確かにその通りです。家に帰った後、「今の会社に入って10年、成長は確実にしている。でもアップデートは出来ているだろうか?」と自問自答しました。

 

彼は26歳の時、将来を見据えて一旦退職、MBAを取得しにアメリカへ。ほぼ独学で、渡米までに英語をマスターした強者です。以降もずっと学び続けて、ビジネスシーン(製薬会社なので専門用語だらけ)でも何ら問題なく使えるレベルにまで達しました。そして28歳で帰国、一回り大きくなった彼を会社が再雇用。立場もお給料も上がりました。誰かと自分を比べるのは無意味だと分かってはいても、彼の努力を近くで見ていると、ひどく落ち込むこともあったなぁ…。でも彼のおかげで、「一生勉強」「常にアップデートすべし」と意識出来たことは非常に有意義でした。英語学習、それからより高度な撮影技術(一眼レフカメラ)の勉強も、彼に刺激されたこの時期が一番熱心にやっていたような気がします。

 

この時期、もう一つ熱心に勉強(?)したのが夜の生活。最初の時から感じていたけれど、彼は完全なるS。プラス、営みの時間が長い、体位のバリエーションが豊富、というのも大きな特徴でした。

 

   ー 後編へつづくー