女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

お代、金百五十八萬円也

これまで私がしてきた買い物の中で、一番高いもの。それは「歯」にまつわるものです。

 

私は歯並びにコンプレックスがあり、ずっとずっと「矯正したい」と願っていました。でも矯正は結構なお金が掛かるし、そもそも私は両親のことが好きじゃないので彼らには頼りたくない。そのため、学生時代より「大人になったら自分の稼ぎで矯正するんだ!」と心に決めていました。

 

就職してから貯金自体は順調だったのですが、想定外だったのは「矯正を始めるタイミングがなかなか訪れない」という点。

雑誌記者(*当時)という仕事柄、取材先でお弁当をご用意頂いたり、クライアントや取材相手とお食事を共にする機会が少なくありません。入社して2~3年はいろんな意味でド新人ですから、「誰よりも多く現場に出ろ。顔と名前を覚えてもらえ」と上司に言われていました。私自身も「この仕事は顔を出してナンボだな」と感じたため、近場の取材から遠方の出張取材まで、積極的にガンガン現場へ。

すると、新卒で一人暮らしということもあり「普段良いもの食べてないでしょう?」とか「旨いもん食わせてやるよ、接待交際費で(笑)」とか言って、お姉さま方やオジサマ方がたらふくご馳走してくださる。当初は「同じ会社でもないのに、何でこんなに面倒みてくれるんだろう?」と不思議でしたが、ある方にこう言われて納得。

「俺たちも若い頃、こうやって先輩方に散々世話になったんだ。それを下の世代に返してるだけだから気にするな。後輩が出来たら、君も同じことしてやればいいんだよ。あとな、単に若いヤツが美味そうにメシ食ってる姿を見たいってのもある。年取ると自分の食欲が落ちてくるから、ガツガツ食うヤツがかわいく思えてくるんだ」

あぁ、なるほど!

 

大変ありがたいお心遣いだったけれど、矯正には「歯磨き」がつきものです。人生の先輩方とお食事をしている時に(しかも1円も出させてもらえない立場で)、長時間席を外して歯を磨くというのは結構な勇気が要る…。それともう一つ、意外な盲点がありました。インタビューです。

 

インタビュー取材というのは、“記者が質問して対象者が答える”という図式ではなく、あくまで“会話のキャッチボール”だと思っています。

私の中では、5分程度の短いやり取りはインタビューではなく「コメント取り」。コメント取りであれば、時間も誌面も限られているので簡潔な質疑応答でいいと思いますが、インタビューを依頼する際は最低30分以上、先方のお時間を頂戴します。カメラマンを入れての撮影込みだったら、トータル3時間超えということも珍しくない。そうなるともう「対談」に近いし、撮影の合間の雑談も(コミュニケーションを図る上で)大事になってきます。先方に心を開いてお話し頂くためには、まずこちら側が心の中を見せて喋る。或いは、口数の少ない方に対してはこちらも口数を減らし、焦らずじっくり待つ。その場合、全体の言葉数が限られている分、噛まずにきっちり、聴き取りやすく喋ることも重要です。

つまり、記者というのは書くのも仕事だけれど喋るのも仕事。矯正をしたら、こちらは喋りにくく、相手は聴き取りにくくなることは明白です。特に私はリンガル(←歯の表側ではなく、裏側に装置を付けて矯正する方法)での矯正を望んでいたので、ただでさえ狭い口腔内がより狭くなってしまう。リンガルは常に舌に装置が当たるため、やや舌足らずな喋り方というか、中でも「ら行」の発音が曖昧になる可能性が高い。以上の2点から、「矯正を始めるのは、もう少し仕事量が落ち着いてからでないと無理だ」と判断しました。

 

結論を言いますと、矯正開始は29歳、矯正終了は34歳。投じた費用は全部で158万円。予定では「約3年」で終わるはずでしたが、シミュレーションより歯の動きが遅かったため、最終的に5年以上掛かりました。今も就寝時はリテーナー(保定装置)を装着し、“歯の後戻り”が起きないよう気を付けています。

 

でも、本当に本当に、頑張って矯正して良かったです! 正直めちゃくちゃ大変で、くじけてしまいそうな時もあったけれど、“思いきり口を開けて笑える喜び”を味わえた瞬間は最高の気分でした。飲めもしないビールを持参して、担当医や歯科衛生士さんと乾杯したかったくらい(笑)。長年つけていた装置を、無事に外してもらった時の開放感はものすごかったなぁ。そして“痛み”や“締め付け”から解放されたことも、とてつもなく嬉しかった。

 

私は大人で、しかも自分が熱望して歯列矯正をしましたが、小さい頃に親から言われて矯正していた友達、周りに結構いたんですよね。今思うと「子供なのに、よく耐えられてたなぁ」と尊敬します。矯正装置はとんでもなく痛いし、さまざまな種類の歯ブラシを駆使しての歯磨きはかなり面倒。大人&自分の意志じゃなかったら、挫折せずに矯正を終えることは難しかったかも…と思います。

 

“大人の矯正”については、お伝えしたいことが山ほどあるので(笑)また後日、詳しく書きたいと思います。それでは今夜も念入りに歯を磨き、リテーナーを装着して眠りにつきます。

 

ちなみに、リテーナーは何年経ってもそこそこ痛いです(泣)。痛いということは、「きちんと装着しなければ、歯が動こうとして“後戻り”してしまう可能性がありますよ」(担当医談)との証拠でもある。それは絶っ対にイヤなので、リテーナーとは一生のお付き合いになろうかと思います。リテーナーちゃん、これからもどうぞよろしくね♪