「1日楽器に触らないだけで、“感覚”や“呼吸”を取り戻すのに3日は掛かる。『上手くなりたい』と願うなら、どんなに忙しくても毎日触れ。たとえ5分でも、毎日必ずだ」。学生時代、とある楽器を真剣に演っていた頃、恩師がよく口にしていた言葉です。今となっては「その根拠を述べてくれ、証拠を見せてくれ。それに、練習と同じくらい“きちんと休息を取ること”だって大事だぞ」と思うけれど、当時10代前半且つ先生を盲信していた私は、疑いもせず「はい!」と元気よくお返事(笑)。
先日、上記の恩師の言葉を久しぶりに思い出しました。担当医にこう言われたからです。「日常生活を取り戻すには、およそ一ヶ月半が必要だとお考えください。あくまで目安ですが、大体3倍掛かるんですよ。◯◯さんの場合、約半月入院されていましたので、一ヶ月半が目安となります」。つまり、11月上旬までは“日常を送ること”自体が大きな目標となるわけですね。当初、心の中で「楽器やスポーツ、語学習得とかじゃあるまいし、そんなに掛かるのかな?」と多少疑ってしまったことを、この場を借りて謝罪致します(汗)。「日常生活とは、兎にも角にも体力が要るものなのだ。そして私の体力&筋力は、こうしている間にも低下し続けているのだ」と激しく実感中でございます、えぇ。
まずは日常の代表格・買い物。入院前、スーパーやら薬局やらで買い物をする際「今日の荷物は重いなぁ」と感じることはあっても、「多すぎて持てない」とか「ネットスーパーに頼ろうかな」とか思ったことはありませんでした。むしろ「いい筋トレになる♪」くらいの感覚です。けれど、退院して数日後、初めてスーパーへ出向いてみて驚愕。普段なら徒歩7分の距離なのに、慎重に歩くせいか15分も掛かってしまいます。加えて、“あちこちの売り場を移動&吟味しつつ商品を選ぶ”という至極当たり前の作業が、とてつもなくしんどい。行き先は、結婚してこの地に引っ越してきて以降、約2年間通っている馴染みのスーパー。にもかかわらず、「私は見知らぬ場所へ来たのだろうか?」と錯覚しそうなほど広く感じるし、体力のみならず思考能力も落ちているらしく、店内を効率的に回ることが出来ません。「この分だと、荷物もそんなに持てないかも…」と思い、予定の6割くらいの買い物で切り上げ、早々に店を出ました。案の定、帰りは劇的に辛くて、両腕がもげそうなほど重く感じます。すぐさま「今後はネットスーパーを活用させてもらおう」と決意し、帰宅後ソッコーで会員登録。現在は“重いものはネットスーパーで注文、軽いものは散歩がてら自分で買いに行く”と使い分けています。便利な世の中となり、心底ありがたい限り。
続いて電車。駅構内・電車内ともに人で溢れ返っているし、駅には長い階段も多いので、私も夫も「一人では危ない」と判断。「特別な用事がなければ、電車に乗るのはまだ先」と考えていました。が、退院から約半月後、検査(←詳細は前回の記事「告知しますか、しませんか」に掲載)のため病院へ行く機会が。「たった3駅をわざわざタクシーっていうのも大袈裟だよなぁ。まさに“特別な用事”だから、思い切って乗ってみよう」と、いざ最寄り駅へ。今までは、階段とエスカレーターが並んでいる場合、無意識に階段へ歩を進めていたけれど、その日は迷わずエスカレーターを選びました。昔、都内から地方へ嫁いだ友人が言っていた、「東京って何気にめっちゃ歩くのよ。特に地下鉄の駅。こっちは基本車移動だから、一日の歩数が極端に減って、足が疲れやすくなっちゃった。帰省するとよく分かるんだ~、『私、毎日こんなに歩いてたんだ』ってね」というフレーズを思い出しました。確かに、地下鉄を含む電車通勤をしていると、乗り換えやら何やらで結構歩きますもんね(入院前の平均歩数は一日8,500歩ほど。今は2,000歩に届かない日も珍しくない)。在宅勤務歴1年半の我が夫も、「通勤しなくなった分、コロナ前に比べて体力が衰えた」と発言。私だけじゃなく、夫の体力回復についても考えたほうが良さそうです。
最後は性欲。退院後、しばらくはそれどころじゃないと言いますか、“軽くムラッと来る”ことさえありませんでした。入院中も何人かのセラピストさんが連絡をくれていたから、女風を忘れていたわけでは全然ないのですが、優先順位としてはあまり高くない感じ。「性欲が戻ったな」と自覚したのは、毎月恒例・生理前にムラムラしてひとりエッチをした時です。夫とは、軽いスキンシップ(キスやハグ)すらないため、「男性と触れ合いたい」「ぎゅっと抱きしめられたい」という欲求はあるものの、女風の利用を再開するには時期尚早。女風って、セラピスト側はもちろん、ユーザー側もそこそこ体力使いますしね、ウフフ♡ でもまぁ、生理前に無事ムラムラしてくれて(笑)安心しました。人間の三大欲求、食欲・睡眠欲・性欲が全て揃い、日常へ向けて一歩前進した感があって嬉しかったです。
さてさて。「三大欲求が揃った」とは言っても、油断は禁物。引き続き消化の良い食事を心掛け、生もの(魚介類をはじめ、私の場合、生野菜も当分禁止)や刺激物は避ける。睡眠をしっかり取る。疲れたら無理せず休む。体力回復のためにも、出来る家事は積極的にこなす。なるべくストレスを溜めない…等を念頭に置き、日々の生活を送っております。
私は、最早中毒と表現してもいいほど“書くこと”が好きな人間ですが、入院中は日記(手書き)もブログ(PCかスマホ)も思うように綴れず、そりゃもうストレスが溜まりまくって爆発寸前でした。面会禁止で身近な人と話が出来ない上、思いの丈を文字化することが叶わないことの辛さ、“心の声”を吐き出す場所がないことの苦しさ…。プラス、日記をつけられない間は、何やら頭の中がごちゃつくというか、いろんなものの整理が上手く出来なかったような気がします。これまでは、「書く」+「それを読み返す」行為によって、自分の気持ちや考え、起きた事象、相手もしくは周りの思い等を理解したり、確認したり、想像したり──そういったことが自然に出来ていたんだなぁと実感。改めて、普段使っている日記帳や、当ブログの存在に感謝しました。言葉、そして文字があり、それを“共通のツール”として多くの人と分かち合える時代に生まれて良かったです。言葉や文字が誕生する以前の時代の人々は、どうやって意思の疎通をはかっていたんだろう。絵とかジェスチャー…? そっちはそっちで、めちゃくちゃ興味あるなぁ。