女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記

嘘も方便

夫と結婚して早や2年。振り返ってみれば、彼と出会って驚いたことはたくさんあります。その最たるものは、「セックスレスどころか性生活がゼロ」という事実ですけれども(笑)、3番目くらいにびっくりしたのが“服を一切試着しない”という点。


私も夫も、衣服には割とお金を掛けるタイプだと思います。高級ブランドに拘るとかではなく、「自分が気に入った服を着て日々を過ごしたい」「いろんなお店を見て回るのが楽しい」という程度ですけどね。よって、コロナ前は度々一緒に買い物へ出掛けていました。


夫はあまり冒険しないと言いますか、無難で清潔感のあるスタイルが好きな様子。交際中はもちろん、結婚して同居を始めてからも、ラフな格好(スウェット姿等)は見たことがなく、在宅勤務中だろうと休日だろうと、大抵オフィスカジュアルっぽいコーディネート。一方私は、オーソドックスなものも着ますが、ちょっと特徴的なデザインや、「コレ…どこの国の、何ていう民族が織った布ですか?」と訊きたくなるような生地(笑)で作られた、個性溢れる一点ものも好きです。

 

さて。付き合って数回目のデートで、とあるショッピングモールへ行った時のこと。メンズ服のお店に入り、しばらく物色していたら、感じのよい店員さんが「本日は何かお探しですか?」とにこやかに近付いてきました。すると夫は、彼と一瞬目を合わせた後にすぐさま逸らし、「いえ」と答えて出口の方向へ一直線。私は「イヤイヤ、さっき『丈長めのカーディガンが欲しい』って言ってたじゃん」と思い、慌てて追いかけます。

「このお店、たまに来るんでしょ?  (趣味に合う店なら)イイ感じのカーディガン見つかる可能性も高いのに、何で『探してます』って言わないの?」

「自分のペースで買い物したいから、店員さんにあんまり話しかけてほしくないんだ」

「じゃあそう言えばよくない? お店出ちゃったら、もう一回入るの余計面倒くさい気がするんだけど」

「うん。だからここはもう諦める」

「えぇっ⁉︎ せっかく来たのに勿体無いねぇ」

「だって、よく知らない人に『話しかけないでください』とか『こういう感じの服が欲しいです』とか言えないんだもん…」

「そうなの? 私言おっか?」

「え、いいの?」(←パッと明るい表情になって・笑)

「全然いいよ〜」

 

私は夫と出会うまで、“社交的かつ自己主張できる彼氏”としか付き合ってきませんでした。だから、「人見知り」&「言いたいことを上手く伝えられない」男性と、プライベートを共に過ごすのは初体験です。「自分の気持ちをあんなに溜め込んで、毎日疲れちゃわないのかな?」「職場では、周囲の人達ときっちりコミュニケーション取れてるんだろうか」という興味(心配)もあった。訊けば、「会社ではちゃんと喋ってるよ、仕事だからね。でも、私生活だと『無理しなくていっか』『妥協しても誰かに迷惑掛けるわけじゃないし』ってなっちゃう」んだとか。へぇ、面白い。


「面白い」と思ったのは夫も同じだったようで、私が「このカーディガンは何色展開ですか、デザイン違い&長さ違いはありますか」とか「これって自宅でガシガシ洗濯できる素材ですかね?」とか“店員さんに詳細を尋ねる行為”に逐一感心していました。そして、かなり気に入っている風に見えたので「ねぇ、待ってるから試着してくれば?」と言ったら、「え…? 試着…?」と小声で呟き、私の目を見つめたまま一歩も動きません。


「あの〜、もしかして試着しない人?」

「うん」

「自分に似合うかどうか、見ただけで分かるの? スゴイね♡」

「いや、分からない。家に帰って、実際着てみたら『違った』ってことも結構ある」

「何それ(笑)! ならちゃんと試着しなよ(笑)」

「試着して、『やっぱりこれじゃない』ってなったらどうするの?」

「他のお店に行く」

「店員さんには何て言えば…?」

「そのまま言う。『これじゃなかったです』って」

「そんなこと言えないよ。試着までしといて、店員さんに悪いもん」

「あのさ、読んで字の如く“試しに着る”わけだから全く問題ないでしょ。それと、“買われたのに一回も着てもらえない服”の気持ちになってみなよ。服だって、ガッツリ着てくれる人のとこに行ったほうが幸せじゃないかな」

「僕、人間しかやったことないから、服の気持ちとか分かんない…」

「私だってないわ(笑)! あくまで、“ものの例え”でしょうが〜(呆)」

 

〈この人、生きるの大変だろうなぁ〉

純粋にそう思いました。「店員さんに何て言えばいいのか?」なんて、考えたこともなかった。私の場合、「着てみたらイメージと違った」「想像よりもタイトだったorゆるかった」等々、ただ正直に答えればいいだけですからね。でも、夫は違います。「心の中で思っていることを、親しくもない人に伝えるのが苦痛」なんだそう。「世の中にはいろいろな人がいる」と頭では理解していますが、この時すご〜く実感を伴ったというか、初めて“実例”を間近で目撃したような気がします。

 

その後、私と一緒の時は試着するようになったけれど、「一人だと出来ない」という夫に、キラーフレーズを授けてあげました(笑)。

「どうしても断れなかったら、『一旦持ち帰って妻に訊いてみます』って言えばいいよ。お財布握られてるテイで話せば、多分それ以上何も言ってこないと思う」

「えっ、そんなこと言っていいの⁉︎ まだ夫婦じゃないし、お財布握られる予定もないのに?」

「いいの、いいの。嘘も方便だよ。そもそも、常に“本当のこと”を伝える必要、ないんじゃないかなぁ」

「分かった、やってみる! ありがとう!」

 

夫も私みたいなタイプ(物事をはっきり言う&仕事以外では至極適当に生きている・笑)と付き合うのは人生初だそうで、「そういう断り方があるとは知らなかった。これなら、だいぶ気が楽だな〜♪」と何やら嬉しそうでした。

それはさて置き。内心、「いずれ結婚したら、この人に大きな買い物を任せるのは危険すぎるから絶対にやめよう」と固く決意しましたね(笑)。大して気に入っていなくても、“本音”、或いは“上手い嘘”が言えずにあっさり契約しちゃうかもしれないもの。嗚呼…コワイ、コワイ(汗)!