女風は、用法・用量を守って正しく利用いたしましょう。

既婚ユーザー・ネギブロコの女性用風俗利用日記+日常譚

疑惑のアイコンタクト

それは、昨年末某日のこと。雑誌記者時代に担当していた歌手から久々に連絡があり、「お願いごとがありますが、今話してもいいですか?」と訊かれました。

彼は韓国人で、ソウルの出身。「もうすぐ家族が遊びに来ますから、東京案内したいです。でも僕、日本語全部は喋れません、漢字も読めるの少しだけです。家族は日本語分かりません。◯◯さん(←私の名前)、前に韓国取材行った時英語喋っていましたね? 僕の兄、英語出来ます。母はとても人見知りですが、韓国で◯◯さんと会っていますから大丈夫と思います。だから一緒に東京案内してくれませんか?」という内容です。


率直に言って、「若干荷が重いな」と感じました。お兄さんは数年間の留学経験があるため、操るのは「ネイティヴレベルの英語」。一方私の英語はすんごく適当と言いますか、会話でコミュニケーションを図ることはまぁ可能なものの、ペラペラだったり文法が完璧だったりするわけでは全然ありません。よって、込み入った話…例えば建築物やら料理やらの詳しい説明を求められても、「それは絶対に無理!」と自信を持って言い切れます(笑)。

なれど、韓国取材(=彼のルーツを探る的な記事作成のため)の折、ご実家におじゃまして幼少期のアルバムを見せていただいたり、お母さんの手料理をご馳走になったり等多大なご協力を賜りましたゆえ、そのお返しをしたい気持ちがあるのもまた事実。期待に沿えるだろうか…?という不安を抱きつつも、「現地でお世話になったお礼として」引き受けることに。


そして迎えた当日。皆さん初来日とのことで、事前に「行ってみたい」と要望があったのはベタな場所がほとんど。私は東京出身ですし、案内自体はさほど難しいことではありませんでした。途中で「これ、ガイドっていうよりカメラマンとしての需要なのでは?」と感じたけれど(笑)、写真撮影は大好き+腕に覚えもあるので、心底「役に立てて良かった♡」と思いました。歌手としてステージで輝く姿はもちろん素敵ですが、「今自分が頑張っている地・Tokyo」を家族に紹介し、自然な笑顔でカメラに収まる彼も同じくらい素敵だった。彼らの貴重な“思い出作り”のお手伝いが出来たこと、本当に本当に嬉しく思います。

 


ただ、一つだけ残念なことが…。何かと申しますれば、お兄さんの奥さんを含め、ご家族全員が完全なる“クチャラー”だった点です。

 

彼自身も来日当初はクチャラーだったそうですが、事務所の方や周りの日本人に注意され続け、「一生懸命改善した」んだとか。私も彼の担当になった際、「食事の時、音がしていたら教えてください。自分ではあまり分からないですから…」と頼まれました。確かに、時々クチャクチャ、ペチャペチャ他不快な音が聞こえることがあったため、その度に目で合図を送って指摘。多分、かなり細かく指摘していただろうと思います。

というのも、私は昔からクチャラーが大の苦手。クチャラーの人とは友達になれないし、カフェやファミレスで運悪くクチャラーが近くに座ってしまったら、その時点で食欲がゼロに…。そんな時は諦めて席を立つか、イヤホンで激しめの音楽を聴いて何とか誤魔化す策で乗り切っている次第です。

でも、今回はそういうわけにはいきません。現在、彼自身はほぼ改善していることもあり、“元クチャラーだった事実”をうっかり失念していたんですよね…。ご実家で手料理をいただいた時も、お母さんは召し上がらずキッチンでひたすら作り続けておられたため気付きようがなかった。そうか〜、小さい頃からの環境&習慣か〜。


私は韓ドラをあまり観ないのですが、その理由も実はここにあります。韓ドラというのは食事のシーンが非常に多く、そしてクチャラーの数も相当多い。見目麗しい俳優さん方が大勢出演していても、食事シーンで「うわぁ….」と拒絶反応が出てしまうと、それ以外のシーンまで色褪せて見えちゃうんですよねぇ(汗)。日本人が豪快にラーメンやお蕎麦をすするのと同じように、韓国では音を立てて咀嚼するのがスタンダードなのでしょうか? うーん、分からない。


さて。締めの高級ディナーの席で、思いきり食欲が失せてしまった私(*しかも奥まった個室だったから一層音が響くんですよね…。控えめに言って地獄でした・泣)。ご家族につられてか、彼もだんだんクチャラー化していきます。その地獄に耐えかねた私が、かつてのように「音、出てるよ。気を付けて」という合図を目で送り続けていると、コース終盤、お兄さんが彼と私を交互に見ながら一言。「2人はそういう仲なの?」。

「え? いやいや、まさか(笑)。年も離れてますし、何より私は既婚者ですよ」

「既婚者なのに、弟とそういう仲に?」

「ですから違います。冗談はやめてください」

「じゃあ、食事中なんでそんなに何度も何度もアイコンタクトを?」

「それは、それはですね…」

イヤ言えない〜!  「弟さん…というかあなた方全員がクチャラーで、それを指摘するために逐一目で合図を送ってました」なんて、私にはとても言えない〜‼︎


最後まで謎の疑惑を抱かれたまま食事を終え、某高級店をあとにした私たち。

「◯◯さん、今日は色々ありがとうございました。家まで送ります」(彼)、「いいです、大丈夫です(焦)!」(私)、「夜遅いし女性一人では危ない。送ってさしあげて」(お母さん)、「夫がいる女性を家まで送るのか? お前、もしかして過去にも彼女の家に行ったことがあるんじゃないか⁉︎」(お兄さん)等々すったもんだし、もう面倒くさいので、結局乗る必要のぜ〜んぜんないタクシーをソッコー拾って一人、帰路についたのでありました。

お母さんにちゃんとお礼が出来たのは良かったけども、何だか無駄に疲れた一日だったなぁ…。

 

余談ですが、その昔「“アイコンタクト”って和製英語っぽい響きだよな〜」とぼんやり思っていた私。実際は普通に英語で、「make eye contact with」的な感じで使うことが多いみたいです。確かに、彼のお兄さんも私を問い詰める場面でしっかり使ってたっけ…(泣)。